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2024.03.15

[中村茶舗]タイに抹茶を流行らせた立役者。日本のお茶文化がアジアに浸透。

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松江で最も古い老舗の茶舗が本格的なお点前をきっかけにタイで
抹茶ブームを起こす!

数年前から、東南アジアの国で抹茶が流行しているらしいのです! この一大ブームを牽引するのが、明治17年(1884)創業の老舗「中村茶舗」。初代、中村末吉が京都宇治の茶問屋「中村藤吉本店」から分家し、島根県松江市で開業されたの始まりです。
20年ほど前からタイやベトナムに日本茶を輸出していた中村茶舗は、タイの現地企業と提携して2007年、首都バンコクの大きなショッピングモールに和カフェ「chaho」をオープンさせました。

「日本からは伊藤園や福寿園など、大手メーカーがすでに進出して煎茶を提供していましたから。差別化を図るためにも抹茶のお店を出すことにしました」と語る4代目社長の中村寿男さん。こうして、お店では抹茶メニューに加え、和菓子、茶道具などを総合的に演出。社長自らが出向き、ブースで抹茶を点てるパフォーマンスを披露するなど、日本文化の紹介にも尽力。
すると日本の茶道が話題となり、2009年には、タイ王室の皇太子妃にお点前を披露し、日本の抹茶を差し上げるという名誉を得られたのです。王室の人気が絶大であるタイですから、これを機に「chaho」は大ブレーク。広くタイ国民の皆さんに知られるお店に成長。現代、タイ国内に2店舗を構えるまでになっています。

「おいしい」の定義は様々だから
日々の暮らしに寄り添えるお茶を

島根県松江市では、暮らしの中にお茶が根付いています。ポットからお湯を注いで抹茶を点てたり、煎茶を一日に何倍も飲んだりするのが日常的である地域で、百年以上も愛されてきた中村茶舗のお茶は「やや淡白ですっきり」。その味の秘密には、こんなエピソードがありました。

それは、中村社長若かりし頃のこと。全国の煎茶を飲む会に参加したときです。ブラインドテストをして一番人気を決めたのですが、選ばれのは、自身も一票を入れた横浜の煎茶でした。
その後、中村社長は一番になった煎茶を松江に持ち帰り、古参の茶師に試飲をお願して感想を聞くと「毎日飲んでごらん」の一言。社長は毎日飲み続けることにしました。すると3日目「なんだか味に飽きてしまいました。風味が口の中に残るのです」。そのことを茶師に告げると、「このお茶は一杯向けで、毎日がぶがぶ飲むようなお茶ではないんだよ」と諭されたのでした。
つまり、どかなにおいしくても、お茶をよく飲む松江には向いてなかったのです。以来、中村社長は「味が濃いとか、コクがあるとか、一つの基準だけでお茶の価値を判断することはしない」のだとおっしゃいます。

ブレンド力で築き上げた家伝の味
山陰の旅の思い出も彩りたい

「全国から茶葉を取り寄せて、独自にブレンドをいたします。ブレンド力が当社の命です」と独自の製法について語る中村社長。不思議なことに、評判の高い静岡と京都のお茶を混ぜると喧嘩をしてしまい、それぞれの長所が出ないのだとか。一方、とても相性の良く合う地域があるのだそう。創業より長い歴史の中で見つけ出された組み合わせと秘伝のブレンド比が、中村茶舗の味として伝承されているのです。

今日、全国の茶商の中で、抹茶と煎茶の両方を製造しているのは、わずか2割とされています。中村茶舗はその内の一つで、抹茶工場では石臼挽きの工程をガラス越しに見学することができます。
日本で初めて、電動で抹茶を挽く石臼を導入したのがこの工場。現在、40台の電動石臼が並び、毎日新鮮な銘茶がつくられています。

「小さい頃からお茶が大好きでした。体に沁み込んだ家伝の味を守っていきます」と語るのは、工場で修業を積む長女の紗智子さん。お嬢さん2人がUターンし、工場と店頭で働くなど頼もしい後継者もしっかり育っています。

JR山陰本線の鳥取駅から出雲市駅を結ぶ観光列車「あめつち」の車内でも、中村茶舗の煎茶「八重垣」を味わうことができます。
お茶で“一服”のその語源は、薬の“一服”。味わい深いお茶が妙薬のように、松江の旅を忘れられないものにしてくれるのでしょう。

中村茶舗

〒690-0064 島根県松江市天神町6
(9:00〜17:00)TEL 0852-24-0002

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