探県記 Vol.74

木の花工房

(2016年5月)

KONOHANA KOBO

234

  • クレッツ・ファビアン 隊員

  • 内山興
    初代キャプテン

町内に5万本の桜が咲くという木次町に
桜色の特産が誕生しています。

緑に囲まれた雲南市木次町の静かな集落、細い道を通って、坂道を上がって、その小さな工房はありました。全国的にも珍しいという、桜染めの『木の花工房』です。
 
桜の花びらを集めて染める…。ただ漠然とそう思っていましたが、それは誤り。
「実は、花から色はとれないんですよ。何ものにも汚れていない山の中で、剪定で切り落とされた、花が咲く前の割り箸よりも細い小枝を集めて、10日から2週間、煮出し続けます。だからガス代がすごいんですよ」と、チャーミングに微笑むのは、多々納睦子さん。2007年、ひとりで木の花工房を立ち上げた代表です。

 
雲南市木次町は、日本一の桜の町を目指す場所。古くから市内には、三刀屋堤防、大東丸子公園、加茂中央公園など、いくつもの桜の名所があり親しまれています。中でも斐伊川堤防の桜並木は、1990年〝日本さくら名所百選〟に選定されています。
 
そこで多々納さんは、桜染めが特産になれば!と考えました。けれど、中国地方まで見渡しても、その技術を教えてくださる人がいない…。やっと先生になる人が見つかったと思ったら、九州の福岡。多々納さんは幾度も訪ねて、教えを請うことができたのです。
 
「最初の頃は、枝とケンカしながら(笑)。こんなに一生懸命やっているのに〝なんで色が出てくれないのっ…〟て」美しい桜色の陰には、かなりのご苦労があったのでした。

 

ピンク系、オレンジ系、グレー系…
1本の桜の木から色々な色が生まれます。

 

染め物体験

夏休みには、子どもたちを対象に〝染め物体験〟を実施されているということで、内山キャプテンたちも挑戦することになりました。
 
グラグラと煮立った湯の中に原液を入れて染液を作り、ムラにならないように濡らした布をその中に投入。空気が入らないように慎重に、ひたすら約20分間、手を止めずに箸でかき回します。
すると、布が色を吸収して、染液が透明に澄んで来ると、「すごいおもしろいわ!」と内山キャプテン。どうやら染めの作業にハマったようです。
 

 
桜の花が咲く前の細い小枝からはピンク系。小枝からはオレンジ系。桜の木の幹からはグレー系など。1本の桜から様々な色が生まれて、ストール、ハンカチ、ネクタイ、匂い袋など、様々な商品が生まれています。
「ご自宅では、頭髪用のシャンプーで洗濯してもらうようにしています。それが一番。漂白剤が入っていないですからね」と多々納さん。
 
さらに、さくらジャムや、桜の花の塩漬けも評判で、「以前、海外からのお客様に市販の桜茶をお出ししたところ、ひとくち飲まれただけで、全員が残された。理由を尋ねると〝塩っぱすぎておいしくない〟といわれたんです」そんな経験がきっかけで生まれた木の花工房の桜茶は、絶妙な塩加減が人気です。
 
そして促されて、多々納さんの手を見ると、シミひとつなく、スベスベ、ツルツル。
「染めの作業は素手でする水仕事なので、手が荒れるとお思いですが、なぜか桜は荒れないんですよ」
見ても染めても、食べても触れても、やっばり美しい、桜の魅力は尽きません。

 

【アクセスについて】
●木の花工房へのアクセス/JR木次駅から徒歩約15分
●島根県雲南市木次町新市320
 
【WEBサイト】木の花工房
 

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