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Vol.01

島根のいいものって
なんだろう

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  • 小幡美香 隊員

  • 小泉凡 隊員

  • 古瀬誠 隊員

  • 西尾俊也 隊員

  • 浜田真理子 隊員

  • 内山興
    初代キャプテン

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山陰には「なんもない」と言う一方で、山陰には「なんでもある」と言う。
その矛盾は、いったいどこから来るのだろう。
深すぎて、ともすると迷路に陥りそうになる山陰の魅力について、
『山陰いいもの探県隊』隊員が、ときに横道にそれつつ、熱く語り合います。

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第1回座談会〜スタートです!

内山: みなさま、こんにちは、キャプテンの内山です。
神戸出身で、小さな子どもを連れて島根県に住み着き、3年余りになりました。
私自身、旅行好きで、この地域は資源にあふれていると思っていますが、一方で、
地元のひとは「行ったことない」とか「知らない」とか、ちぐはぐな感じです。
私は、住んでる者とよそ者、その両方の立場を活かしながら、なにか尽くせて
いけたならと意気込んでいます。

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小幡: 私は、旅館というフィールドで「山陰のお陰さま」の部分、つまりは感謝の
思いをもって仕事をしています。恵みがいっぱいのこの地域で、「山陰のお陰さま」に
関わりながら、気持ちを乗せながら、お客さまに伝えていけたならと思っています。

西尾: 仕事柄、会館に来られるアーティストの方から、「おいしい店は?」とよく
尋ねられます。この探県隊を借りて、私なりのストックをもっと増やしていければと
考えています。

小泉: 僕は26年前、松江にIターンして来て、色々な教育活動に関わっています。
現在、子どもたちの五感力を育む「子ども塾」をやっていて、その中で、若者が自然から
学ぶことがたくさんあると思っています。もともと乗り物が大好きで、青春18キップで
ときどき横浜の実家まで帰りますが、山陰の小さな駅で列車のドアが開いて、フワッと
車内に入ってくる山の空気、そういうものも宝物なのかな。五感をもっと活かしながら、
いいものを発見していきたいです。

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浜田: 私はライブ活動などでいろいろな場所に行きます。
いろんな場所に行くことで改めて山陰のことを思ったりしますが、私の役割はたぶん、
発信すること。いろんな場所で歌いながら、山陰のいいものを言いふらしたいと思います。

古瀬: 山陰には、いいものがたくさんあるんですが、地元のひとは、
それに気付かずにそれに浸っている場合と、よさが分かっているのにうまく発信できて
いない場合、そしてもうひとつは、山陰のひとは自ら楽しむことはするのですが、
「他所からひとを呼んでこよう」という欲はあまり強くないですね。総合すると、
山陰にお見えになったお客さんにしてみれば、いいものを食べたいし見たいわけです。
その「いいもの」をどうやって絞り込むか、その絞り込む作業が重要ではあるけれど、
実のところそれは本当は難しい。やはりこれは草の根で口コミみたいなカタチで
やっていくしかないわけです。ですから『山陰いいもの探県隊』の活動が、
そのきっかけになればいいですね。そういう意味で、私自身、探県隊に期待しています。

山陰のいいものって、
そもそもなんだろう?

内山: いいものはたくさんあるんだけれど、それをどう活かして発信していけば
いいんだろう?ということについて、話したいと思います。私は他所に行って
びっくりするのは、「出雲大社は日本で一番大きいお社です」と言うと
「そうだったの?」とおっしゃる方が、かなりいらっしゃるんですよね。

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小幡: 私のフィールドは旅館で、どうしても館内にいることが多いんですけども、
すぐお隣に、米国の日本庭園専門誌で11年連続日本一に選ばれる足立美術館さんが
あります。

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山陰だけではなく日本の中で評価が高いもの、さらには世界に誇れる
いいものが、実はたくさんあるという目線で、いいものをたくさん探せるなと
感じています。

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小泉: 身内の話になりますが、小泉八雲がまず、ここに来てやりたかったことは、
古事記を読んできたこともあって、出雲大社参拝なんですよね。
そして住んでいくうち、宍道湖のある「霧に包まれた風景で、晴れていても
夢の中にさす光のように穏やかな」そういう風景に魅了されます。

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世界を回ったけれど、それは他所では見たことがない風景だった。そして段々と
目には見えないものに関心をもつようになって、当地に伝わる怪談話など、
語り継がれてきたカタチのない伝承みたいなものに惹かれていったわけなんです。

浜田: 私はコンサートでいろんな土地に行きますが、文化や歴史が全然ない
まちってあるんですよね。壮大な歴史の中で育った私としては、歴史や文化に
触れることで、地元のことが分かるのではと思っています。
最初の入口は、おいしいものや出雲大社でいいんですが、最後は肌で感じるもので
あって欲しい。なにかひとつ「山陰のいいもの」を言わなきゃいけないのは、
いっぱいあるから難しいですね。

西尾: 一番基本は、やっぱり「本物」なのかなという気がしています。
たとえば、宍道湖のしじみの力を借りて、もっとほかの本物の「ここに来ないと
食べられません、見られませんよ」という戦略もあっていいのかな。
やはり本物にこだわったほうが来る動機にもなるし、文化もそう。
「なにが本物か」探検してもいいのかなと思います。

古瀬: たとえばね、EXILEのヒロさんはこう言ったんですよ。
「松江が大好き。僕たちが行くと、他所では黒山の人集りになるけど、ここの方は
ほとんど寄ってきてくれない。それで無関心なのかと思えばそうではなくて、歓迎
されているのを感じる。その距離感、得も言われぬ居心地よさがあります」。
確かにそういうところがありますよね。それは無形なんですよ。

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内山: 一説には、戦うことなく話し合いで国譲りをされた大国主命の、
話し合いの文化が山陰にはあると言われていますね。

浜田: 私のコンサートの場合は、「疲れてるのにアンコールしたら悪いんじゃ
ないか。立ち上がると後のひとが見えなくなるから」と。
やってる私としては「つまらなかったのかな…」と思うわけです。でも後で聞いたら
「すごくよかった!」とおっしゃってくれる。山陰のひとは四方八方に気をつかって
くださいます。

西尾: 先日、視察でいらした群馬県のひとを国宝・神魂(かもす)神社に
案内しました。ちょうど鳥居の前で車を降りたんですが、そのひとの第一声が
「周りになんにもない」。
普通、国宝といえば商売にしますから、だいたい土産物屋がズラーッと
並んでいるわけですね。それから拝観料なしで上がっていって、しばらく眺めてから
「さすが出雲だね。“たとえ国宝でも、見たければ勝手に見れば”という態度は一体
なんなんだ」とおっしゃいましたね。

古瀬: 私が驚いたのは、作家の黒井千次さんが来られたとき。
一日中、雨だったんですが、帰り際に「日本で一番雨が似合うまちだ」と評された。
それはなぜかというと、神社へ行ったり、まちを歩いたり、そばを食べたりして、
「その雰囲気と雨とがね、ものすごく似合う」と表現してくれたわけ。
僕ら地元のものは、そんなことちっとも感じていませんよね。
出雲文化圏の中にずっと育んできた、心動かされる「なにか」が、
やっぱりここにはあります。

小泉: 作家の五木寛之さんも同じような発想をしていらした。
「最近、作家が自然のことを書かないんだよ。このまちに来たら、自然を書きたくなるよ。
そういう気持ちにさせてくれるまちだ」と。我々にとっては当たり前でも、初めて
訪れるひとは、そういう強い印象を受けるみたいです。

隊員として、
具体的になにをすればいい?

内山: 我々は隊員として、具体的にどんなことをすればいいんだろうか、
あるいは、どこへ向かっていけばいいのだろうか。それについてはいかがでしょう。

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小幡: おもてなしの観点から言えば、お客様は「島根に来たんだ!
島根を感じたい!」わけなので、そことちくはぐであってはならないよう、おもてなしの
心をつかいます。たとえば、地元の食材であったり、地元の焼物であったり、なにか島根が
伝わるものをご用意します。また、言葉使いも大切で、自然に方言も使います。
ひとを通じて感じていたけるもの、それも満足度につながるのかなと思っています。

西尾: アーティストのみなさんが当館のステージで感じることは、
だいたい共通していて、お客さんがみんな「あったかい」と言いますね。
そういう意味では、ここって居心地がいいみたいです。それと、今度走る豪華列車ですが。
茨城に住んでいる知り合いが、ひまができればこっちへ来て、古事記や風土記に
因む場所をずっと歩いているんですよ。
それだけ魅力のある土地であるのならば、古事記や風土記に絞り込んだツアーがあっても
いいのかなと思います。もっと言えば、情報は提供しますが、こっちに着いたら
「自分で探してください」っていうくらいでもいいかもしれません。

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浜田: 「探す楽しみ」みたいなところですね。すごく「商売しようぜ!」
というのはちょっとひきますけど。なにかを売っていかないといけないのなら、
「ほっとく」というのも方法。便利を追求したら東京が一番なんだろうけれど、
不便を楽しんでもらうみたいなところがあってもいいですよね。

西尾: たまたま、京都で仏教の勉強をしているというドイツ人と
居酒屋で知り合いました。出雲大社に行った帰りだという彼に「どう思った?」と
尋ねたら「素朴でいい!」と感激していましたね。
さらに「京都はもうダメだ。神社仏閣には土産物屋が張り付いていて風情がない」とも。
そして一番感激したのは、一畑電車に乗っていて、ふっと「なにか違う」と思ったら、
女子高生が化粧をしていない。「あれはいい!」って言うんです。そういったものって、
こっちに来ないとわからないですよね。

小泉: 最近、僕は、佐野史郎さんと山本恭司さんと3人『朗読の夕べ』で
全国各地に行くことが多くて。このイベントに来るお客さんって本当に出雲が好きな方が
多いんですよ。それで必ず3人で島根の話をするんですけど、特にそういう方には口コミで
良さを伝えてもらって、実際に足を運んでもらえるようにしたいですね。
寝台特急『サンライズ出雲』という移動手段が非常に注目されているじゃないですか。
そういう途中のアクセスも楽しむ旅があっていいと思うし、豪華列車が走るようになれば益々
そういう傾向になると思います。移動手段も旅の重要な要素。そういうものを楽しみつつ、
まずは出雲を好きな方に来てもらって、その方からどんどん口コミで広めてもらいたいですね。

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古瀬: だいたいみなさん方の意見は、山陰の深い部分に気がついて
欲しいということですね。要は、来ていただいて触れていただくしかないわけです。だから、
来ていただくためには、分野ごとに特定していったらいいと思いますね。
たとえば、自然景観だったらこういう所を、生物の生態系が見たかったらこういう所を、
さらに史跡や神社仏閣ならこういう所を見て欲しいといった絞り込みをすべきですよね、

これから、おもしろくなる
山陰いいもの探県隊!

内山: こうやって違うジャンルで働いている隊員が集まって
議論することによって、共通の理解が生まれます。そうやって重ね合わせた世界というのは、
より一般化された世界ですから、より観光客目線に近づいていける。それが今回のコンセプト
でもありました。そろそろ時間も迫ってきました。最後にひとことずつお願いします。

小幡: 探県隊って手探りの部分もありますよね。
使命感をもってしっかりと。五感をフルにつかって、自分の感覚で、探県隊としてしっかり
活動したいと思います。

西尾: 大変だと思うんですが、今日の話で決意をあらたにしました。
ひとつ困ったなと思うのは「これ僕だけの秘密にしておきたい」というものもあるなと、
まっそれは冗談ですけど。

小泉: 僕は学校で地域探検学という授業をやっています。
学生を2泊3日、奥出雲町に連れて行って探検させて、感じたものを地域の方もお呼びして
発表するという内容です。学生ばかりに歩かせることを考えていたんですが、みなさんの
いろんな考えを聞きいて、また自分も、もう一度、探検したいなと思っています。

浜田: そもそも私のコンサートに来てくださるファンはマニアな方で、
もともと私の音楽を探して来てくださった、探すのが得意な方々。
そして、2回、3回と来ると、山陰ってもっと深く知りたくなってくるのだそう。
そんな好奇心を満たす地の、本当にいいものを探しつつ、ファンの方に向かって私も
発信できるようがんばります。

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古瀬: 探県隊のひとりとしてね、誇れるものを探していきたいと
思いますので。これからも、どうぞよろしく。

内山: それでは、第1回『山陰いいもの探県隊〜座談会』はこれで終了です。
みなさん、どうもありがとうございました。
お疲れ様でした。