#3

座談会 Vol.03

山陰のいいところって
なんだろう

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  • 柄木孝志 隊員

  • 坂口吉平 隊員

  • 濱田美絵 隊員

  • 堀田收 隊員

  • 内山興
    初代キャプテン

第3回ダイジェスト映像

 

第3回座談会、今回は、米子で懇談しました。

内山興 キャプテン

内山: 山陰いいもの探県隊の座談会も3回目になります。今回も様々な立場から、様々な議論を交わしていきたいと思います。よろしくお願いします。

坂口吉平 隊員

坂口: 私は、55年前に米子で生まれ育って、高校まで地元におり、10年ほど東京に出ていました。そして30歳になったとき、山陰に帰ってきたわけです。いま思うと、学生時代は、本当によく地元に帰省していましたね。実家では、まず朝5時に起きてゴルフを1ラウンドやって、その後、海でウィンドサーフィン、10時からテニスをやって、午後3時からまたゴルフ。夜になったら、夜景を見に山へ上がった。素晴らしい海や山が、こんなに生活圏に近い場所は他にない、もしかして山陰は、世界に名だたるリゾート地だなという気持ちで帰って、現在の仕事に就いています。

濱田: 私も、高校までは地元で、関東に約10年にいて、30歳でUターン。戻ってきたときに一番感じたのが、関東と山陰は、“あるもの”と“ないもの”がいつも背反していることです。絶対に動かせないものに関しては、山陰にあるものの方が遥かに優位なものが多いと思っています。自然でいうと、水と森林、そして空気です。食に関しては、加工の文化はあまり発達していないかもしれませんね。それは、あまりにも近くに海も山も川もあって食材が豊富すぎて、そのまま食べちゃったというのが、もしかしたら山陰の料理なのかもしれませんね。

柄木: 僕は、完全なIターンで、11年前に大阪から米子に来ました。まったく右も左もわからないような中で、山陰に暮らし始めて、いろいろなことを自分の目で見ていきながら、そこで気づいたのが、いいものがあることに地元の人たちほど気づいていないという現実です。そこで私に出来る事は、外の目で見た山陰の良さを、地元の人に伝えていくことだと考えました。私の活動の中に「とっとりバーガーフェスタ」という事業があります。そのコンセプトは、まだマイナーな鳥取県の産品を全国的に知っていただき、日本一の事業をやって価値のブランディングをすること。今年で7年目になりますが、まだ県民のみなさんに理解していただけていないので、ちょっとでも知っていただけるような活動をしているというのが、いまの私の現状です。

堀田收 隊員

堀田: 境港商工会議所の会頭をやっております、堀田です。境港の特徴は、マンガ「ゲゲゲの鬼太郎」の作者・水木しげる氏の出身地であることもあり、「さかなと妖怪のまち」をキャッチフレーズにして、水木しげるロードは一大観光地となっています。そして、やはり港があるというのが特徴で、今年も20回以上、アメリカやフランスなど世界のクルーズ船が寄港します。JR境港駅のその先は終わりじゃなくて、環日本海へ、全世界へつながっている。境港はそういうまちであると思っています。

内山: 私はですね、2011年7月に、JR松江駅の駅長として山陰に着任しました。それまでは、神戸や東京など、いわゆる都会でしか生活したことがありませんでした。その中でも、神戸の人は、神戸のことをもの凄く自慢するんですね。私も神戸出身で、こんなに自慢できる場所はないはずだと思っていました。ところが、山陰に住んでみたら、実に住みやすい。しかも、田舎だと思っていたら、そんなに田舎でもない。情報も、今はインターネットがありますから、そんなに不便ではない。なによりですね、資源に非常に恵まれているんですね。いま山陰について本当に思うことは、自慢できるものがたくさんあるということ。しかし、山陰の人は自慢しない。その奥ゆかしさだとか、ある種のしなやかさや、美しさみたいなところを、豊かな自然と合わせて、“パンパカパーン”じゃない発信の仕方があるんじゃないかなと思っています。

 

誰もが認める住みやすさとは、どんなところ?

坂口: 私は、経済人として思うに、まち自体に競争がないんですね。いい意味での競争ではなく、見栄というのか、そういものが意外と少ないまちだなと思っています。隣の家が何を言って、何を買ったかなんていうことを気にしない。隣が海外旅行に行ったからうちも行かなくては、なんてこともない。自分自身の「幸せ度」というのかな、幸せの尺度を持っている人が山陰には多い。幸せっていろんな基準があるんだけれど、お隣のことが良く思える風土が山陰にはあると思います。

濱田美絵 隊員

濱田: 住みやすさでいうと、大火や地震は多少あったとしても、災害がとっても少ないところが山陰の特徴なのかなと思っています。それともうひとつ、県外から来られた方々がなぜ過ごしやすいのかというと、ある程度のところに、いろんなものが、コンパクトにある、というのもそうなんですが、やはり“人”は凄くあると思うんです。他所の人が入ってくることに対してあまり疎外感がないというか、孤立し難い人間の距離感というのかな、そういうところに住みやすさを感じるんじゃないのかなと思います。

内山: 県外から来られたIターンの感覚で見て、実際のところはどうしょう。

柄木: 勘違いしちゃいけないのは、首都圏や関西圏の人たちって、鳥取県に本当に田舎のイメージしかないんですよね。本当に何もないイメージ。ただ、実際、僕が11年前にこちらに来て実感したのは、想像してたより都会だなと思ったこと。それはどういうことかというと、ここ凄く重要で、今の若い子たちって田舎ばっかりの生活には絶対に馴染めないんですよ。だから、ある程度、田舎暮らしもあって、その中に、都市部の暮らしが存在してないと生活できない。だから、そういう意味でいうと、山陰にはコンビニやスーパーや娯楽施設などがフルに揃っているんですよね。そして、都会ほど人が溢れていないので、逆にいうと地域のコミュニティが凄くしっかりしているんです。だから、都会だと隣の顔がまったく見えないのが、山陰だと隣の顔が見えるんですよ。そういった孤立感が非常に薄い地域だと思います。

坂口: 私は、1年の3分の1を東京で過ごしていますけれど、たとえば、東京の1畳にいる気持ちと、こっちの1畳にいる気持ちと違うんですね。自分が存在する範囲が実は山陰は広いんです。だから住みいいんじゃないかなと感じます。同じ面積であっても、心の余裕というか、心に占める面積が山陰の方がかなり広いなと感じますね。

堀田: それに山陰は、海に面しているということもあるし、絶対に家が建ちっこない中海や宍道湖といった水の周りに、ぐるっとあるエリアだから、とても余裕があるんじゃないのかなと思うんですよ。

 

人という資源を使って、どうやって伝えていく?

内山: “人”という資源を使って、“地域の魅力を発信していく”ということについてお聞かせください。

柄木孝志 隊員

柄木: 僕が感じるのは、山陰に住んでいる人は、まず地域に対する自信というものを失っている部分があると思うんです。それは何かっていうと、都会が上で、田舎が下だという構造が日本そのものに出来上がってしまっている。でもいま、改めて注目されるのは、都会の暮らしがすべて正しいわけではなくて、地方には地方の幸福感というものがある。実はこれが本当の意味で人が暮らすうえで大事なことなんだって気づき始めているんですね。それを今後どうやって、都会の人たちにアプローチしていくかというプロモーション力が凄く大事だと思うんです。そのためには、地元の人たちがまず胸を張って「この地域は素晴らしいんだよ。この地域は暮らしやすいんだよ」と自慢できなければ、たぶん始まらないと思うんですよ。

濱田: そうですね。人を高めることって地域力を高めることだし、地域のポテンシャルも高まれば魅力度も高まる。やはり人の力だと思うので、問題はマインドを高める方法と、その高めたものをどう発信するのかっていう技術的なことになると思います。たとえば、山陰に来たら、おもてなし県ですよと言われても、形がなくてわかり難いですよね。たとえば、人材育成ナンバーワンの県とか、水やりできる環境ナンバーワンの県とかね、そういうものが、見るもの聞くもの食べるもの、もてなすものすべてに通じるようなテーマに向かって行けたら、カラーが出せると思います。

内山: 神話というのは全国に誇れるというか、内容的にもキラーコンテンツに成り得ますよね。中には、子どもが興味をそそられるような内容もあるし、大人だと実際の歴史と重ね合わせると面白かったり、大人なりの楽しみがあったりする。神話という世界は、とてもにいいと思うし、ここにしかない。私の娘なんかも幼稚園で学んできますからね。ただ、そういう取り組みが始まったのは、つい最近だと聞いています。もっとこの取り組みがいろんな地域に展開されて、神話教育がもっと広まって欲しいですね。

坂口: 確かに神話は、我々にとって最大のエッジだと思うんです。地域の歴史を教えるために、八百万の神様を教えるのは大賛成。それと同時に、教えるために地域教育というものを、もっと活性化しなくてはいけないでしょう。家庭教育で、その家の歴史をきちっと子どもの頃から教える、小学校になったら地域の歴史を教える、中学校になれば県や中国地方の歴史を、そして日本の歴史を教えていって、郷土愛を育んでいく必要があると思います。

内山: 環日本海という考え方がありますよね。先ほどの話にも通じるんですが、このあたりは僻地(へきち)のようなイメージを持たれていますが、よくよく考えたら、いろんな文化がいち早く渡ってきた地域であるはずですよね。その昔、最先端の文明があったばすのこの地域から見て、現代においてどう世界に向けて発信できるでしょうか。

堀田: そうなんですね、本来なら大陸からの文化がいち早く来て、当地が一番の文化の受け皿だったはずなのに、いつの間にか逆転しちゃって、内向きになって、自慢することが悪いことみたいに遠慮がちに過ごすという習慣が身についてしまったようです。それをどうやってひっくり返したらいいかというと、自慢することはいいことだけど、“やはり人から褒めてもらいたい”。よそから褒めてもらえると初めて、「やっぱりうちは良かったんだ」と思えて、また次に、実はこんなものがあるんですよと、どんどん連鎖的にいいものが出てくると思うんですね。

 

トワイライトエクスプレス瑞風に、何を乗せ、何を期待する?

内山興 キャプテン

内山: そろそろ最後になりますが、2017年春に、JRがトワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)を山陰にも走らせることをきっかけにして、「この地域のいいものって何だろう?」と時間をかけて調べ、その中の選りすぐりを列車の中にも乗せていこう。あるいは、見つけていく過程の中で自分たち自身を見つめ直し、磨き上げる活動として、この探県隊を立ち上げたわけです。列車の運行が2年後に控える中で、この列車をきっかけにして、どんな地域にしていきたいか、あるいは、列車に対する期待、あるいは、隊員としてどんな活動をしていきたいか、お聞かせください。

堀田: まずは、自分で楽しいなと実感するために乗ってみたいと思います。いかに楽しいかということを体現して、みなさん方に伝えたいと思います。いままでこうやって、「我々が誇れるものはなんだろう?」と考える機会がなかったので、まずは自分自身でいいものってなんだと確認しながら、トワイライトエクスプレス瑞風が走っている間に、いろんないいものを拾っていきたいと思います。そして、「この地域には、こんなものがあるんだよ!」ということが、列車を通じてあからさまになってくれると嬉しいですね。

柄木: 僕が感じるのは、豪華列車を走らせたから“OK”という環境ではなくて、走らせたあとのことを考えるべきだと思うんですね。一番重要だと思うのは、走っている環境、もしくは乗客のみなさんが乗ってる時間の中で、どれだけ山陰を感じられるのかというホスピタリティです。だから豪華列車というくくりで、初めて山陰にお越しになる方に、山陰のファンになっていただくためのきっかけを、これから真剣に考えなければいけないと思います。そして、来た人が次にまた山陰に帰って来てもらうための仕掛けをどういうふうにつくりあげるかが、一番重要なミッションだと思っています。

濱田: 私が興味があるのは、「列車にどんな人が乗っていらっしゃるのかな?」なんです。そこで、なにかしらの交流ができないかなと思ったりします。乗客のみなさんに長い時間の拘束はできないから、瞬時で良いところを伝えられたり、瞬時でお互いがキャッチボールができるような訓練をしておかなくてはいけないと思っています。ただ車窓に旗を振るとかではなくて、ちょっとしたコンタクトがパってとれるように、人間的なブラッシュアップをしながら期待して待ちたいと思います。また、そういうことができるチャンスなのかなと思っています。

坂口: やはり、走り出すことが目的ではない、ということが共通の意見です。ネット社会ですから、きれいな景色や食べ物の情報はいくらでも入手できます。しかし、たとえ情報があっても、列車に乗られたお客さんに新しい宣伝マンになってもらえるか、リターン客になってもらえるかどうか、そこのところを注意していかなくてはならないと思っています。ようするに乗った人が満足するのは、情報を与えることだけじゃない、情報を体験すること。情報をたくさん出すのではなくて、深い情報を出すような列車になって欲しいと思います。

内山: トワイライトエクスプレス瑞風をきっかけにして、どんな地域を創っていくのか、これからもいろんな問題点が出ると思います。これをきっかけに議論がおこり、「それでは何とかしようじゃないか!」と地域の人が動き出す。まさにこれが、いいもの探県隊の本当の目的でもあります。私のこれからのテーマは、「山陰から日本をおもしろく!」。このフレーズをいろんなところで言っていき、しかも、やっていきたいと思いますので、みなさん、引き続きご協力をお願いします。本日は、お集まりいただきありがとうございました。

 

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