私は、鳥取に移住するまで偉大なるその名前を知ることはなかった。写真家としての道を歩み始めるまでは…。
初めて作品にふれた時の衝撃を今でもはっきり覚えている。それは風景写真という、先生の作品とはまったく畑の違う私の写真にも大きな影響を与え、それが私自身の個性と感性を生み出していったと言っても過言ではない。生前の先生にお会いしたことはない。だから先生を師事した訳でもない。しかし、私の作品の中には間違いなく「UEDA-CHO」はインスパイアされ、先生の作品の世界観は私の中に強く刻み込まれた。まさに心の師だ。
ここ大山を拠点に風景写真家として歩み続けて15年。ありがたいことに、活動の幅は県を超え、今全国へと広がっている。ただ、間違いなく言えることは、地元の人たちにこの大山を写真を通じて誇りに思ってほしいと発信し続けてきたことが原点だということ。そして、その発表の大舞台として、写真集第二弾を発刊すると同時に、今秋植田正治写真美術館にて大規模な個展「大山24hours」を開催することができた。これほどの名誉なことはない。
今年大山は開山1300年を迎え、改めてこの山の価値を見つめなおし、その偉大さを再確認し、未来へと受け継いでいこうという目的がある。ならば同時に、私の作品を通してでも今一度この地域のみなさんに植田先生の作品の素晴らしさを知ってもらい、ここに植田正治写真美術館があることを誇りに思っていただきたい。心からそう願う。
大阪府出身、大山をはじめ山陰に魅了されて鳥取県米子市にIターン。大山の一大イベント『とっとりバーガーフェスタ』の仕掛け人。地元の人でさえ見たこともないような感動的な山陰の風景を見事に激写した写真集『瞬(matataku)』、『24hours』好評発売中。