国宝・松江城の東側、堀川に架かる北総門橋は、江戸時代の木橋が復元された情緒ある撮影スポットだ。この北惣門橋のたもとに、松江の歴史・文化を映像や模型などで紹介する『松江歴史館』がある。武家屋敷風に建てられた館内には、松江城の天守を借景にした日本庭園を眺める大広間もあり、お茶どころ・和菓子どころ松江を満喫しながら、ゆっくりと休息を取るにも最適な施設だ。
谷夏海隊員は、2011年、松江開府400年祭をPRするために結成された〝まつえ舞姫隊〟のメンバーであり、松江観光ガイド〝ちどり娘〟の第1期メンバー。’16年に結婚し、翌年、可愛い女の子のママになっていた。
島根県松江市で生まれ、「父が魚釣りが好きで、よく連れて行ってもらって」わんぱくに育ったという谷隊員。一方、家では「私が生まれる前から母が料理教室をやっているので」幼い頃からたくさんの人たちとふれあい、人見知りすることなく明るく育った。
また、小さい頃から当たり前に包丁を握り、中学校のお弁当は毎朝自分で作った。今も、食べることも、作ることも大好きで、調理師免許も持っている。
高校卒業後は、進学のため大阪へ。目的もなく進んだ大学生活には違和感がつきまとった。たまらず両親に相談すると「料理をやってみたら」とのアドバイス。その言葉を信じて、辻調理師専門学校に進み、料理を基礎から学んだ。
「当時、アルバイトをしていたお店の店長さんから〝接客が好きなら、これを読んだほうがいいよ〟と勧められたのが、名門ホテル 〝ザ・リッツカールトン〟の本」だった。「こんなホテルが世の中にあったんだ!」と衝撃を受け、書店にある関連書籍を全て読み、アルバイトで貯めたお金で宿泊もした。やがて「このホテルで絶対に働きたい。何年かかっても採用試験を受けてみよう!」と覚悟を決めていた。
入社試験の募集要項には「英語必須」と書いてあった。けれど谷隊員、英語が苦手。それでも「ダメ元」で受けると、見事に1回で合格。そこには、こんな秘策があった。
「普通のことをしても絶対に受からないと思ったので、宿泊した感想と、働きたいという熱い思いを、便箋4枚にまとめて履歴書と一緒に送ったんです」というその熱意が通じたのだろう、すぐに連絡が入り、4次試験まで進んだ。
そして、支配人面接のときだ、谷隊員は「サービスするうえで一番大事にされていることは何ですか?」と逆に質問。
支配人の答えは「パッション」だった。リッツカールトンで働きたいという谷隊員のまさに「熱意」が、採用の決め手となったに違いない。
こうして配属されのは、本格イタリアン料理レストラン〝スプレンディード〟のキャッシャー。お客様をお迎えし、お見送りするという重要な部署である。
あこがれの職場は、最初の1ヵ月「毎日泣いていた」というハードさだったが、そこを乗り越えると、「自分のしたいサービスをさせてもらえる」環境が徐々に楽しくなり、世界最高水準の接客を学ぶことに喜びを感じていた。
ところが、2年を過ごした時期、体に異変が現れた。嘔吐が続き、意識が朦朧とする。病院で検査をすると「このままでは危ないから、体を休めなさい」という診断。知らない間に過労状態になっていたのだ。体がダメになっては働くこともできなくなる。心残りはあったが、「一度実家に帰り、改めてリッツに戻ろう」と決めたのだった。
ふるさと松江は、谷隊員をすぐに癒やしてくれた。食べ慣れたおいしい食事、人のあたたかさ、都会とは違う安心感が、疲弊していた体を元気にしてくれた。間もなく薬も必要なくなった。
体が元気になると気持ちも前向きになる。もう一度大阪へ行く資金を貯めるために、アルバイト探しをはじめた。目にとまったのは〝松江観光スタッフ募集〟の中の経理の仕事。電話をかけたがすでに定員に達していて、「ダンスの方なら空いてます」と促され、言われるがままに応募。試験に受かり〝まつえ舞姫隊〟のメンバー〝なでしこ〟になっていた。
「一番うれしかったのは、保育園に行ったときのことですね。〝舞姫隊になりたい!〟ってちっちゃな女の子があこがれてくれていたこと。続けるって大事だなと感じました」
舞姫隊の1年間の任期が終わると、ステージ上の活動が評価されて、松江観光ガイド〝ちどり娘〟の第1期メンバーとして立ち上げから参加。谷隊員たちの懸命な活動が実り、現在、月平均100名のお客様が利用する名物ガイドツアーになっている。
2016年、松江市で125年続く老舗・藤本米穀店の5代目と結婚。翌年、女の子のママになり、安心安全な島根の食材で離乳食を作る毎日を楽しんでいる。
「娘にも松江を詳しくなってもらいたいので、県外よりも、松江のコアな場所を旅行するようにしています。松江のスペシャリストというか、〝自分の住んでいるところは、こんなに素晴らしいんだよ〟ってちゃんと話せるひとになってもらいたいと、主人も私も思っているんです」と最高の笑顔。
どこにいても、なにをしても、一生懸命で明るい谷隊員のパッションには、ふれあうすべての人を幸せな気持ちにさせてくれる魅力がある。
島根県松江市出身
山陰の魅力をたくさんの方々にお伝え出来るように、「笑顔」をモットーに頑張ります!!