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隊員の部屋

鳥取県米子市の旧城下町、汽水湖「中海」に注ぐ旧加茂川に架かる石橋を渡ると、古い町並みが残る通称「しょうじき村~笑い通り」がある。明治・大正・昭和の建物が点在する500mほどの古い商店街。築150年の駄菓子屋「岡本一銭屋」は今も学校帰りの子どもたちが立ち寄るお店だ。茶葉や茶道具などを扱う「ながた茶店」は創業から今年で217年になる老舗茶店だ。今日は、ここ「ながた茶店」で、濱田美絵隊員が待っていてくれた。地域づくりコーディネーターであり、「地域と人と自然の元気をつくる」(株)めぐみの社長。良く通る明るい声、元気でやさしい笑顔、濱田隊員がそこにいるだけで、雰囲気が一気に華やいだ。

生まれも育ちもJR米子駅の真後ろ。駅舎の後姿を見て育った濱田隊員。幼い頃の写真を見ると、「姉はきちんとポーズをとっているのに、私は全部ズレまくってるんですよ。たとえばピアノの発表会とか、紐落としとか、足はズレてるし、椅子からもズレてる」そんな落ち着かない子どもだったようだ。
中学校では、テニス部に入り部活動に一生懸命。普段はおとなしい性格だったが、文化祭になると模擬店を企画したり、すでに当時からマネージメント力を発揮していた。
高校は進学校で、テニス部のキャプテンも務めた。文武両道の優等生を想像するが、「なんでも出たとこ勝負みたいなところがあって、考えるより先に行動してしまうタイプ。リスクを考えたり、他人を気にしたりもしないから、失敗してもダメージがないの」と笑う。

東京で明治大学短期大学を卒業すると、大手出版社に就職。企画部に配属されて、「蝶よ花よ」の職場を想像したが、校正という地味な仕事に、早々と挫折モードに突入した。
折しも、国内では、「科学万博、つくば’85」に代表される博覧会ラッシュ。「こういうイベントを支えている人達って、なんか面白そうだな」と思った濱田隊員は、大手出版社をすぱっと退社。企業のパビリオンなどで働くイベントコンパニオンの世界に飛び込んだのだ。

そして、1年後、表舞台に立つより、裏方の仕事に魅力を感じて、コンパニオンを育成・派遣する事業を開始。同時に3つのイベントを掛け持ちすることもあった。20代前半という若さだった。
やがて、コンパニオンの育成・派遣、さらには、博覧会などの運営に携わるイベントコーディネーターとしての仕事ぶりが認められて、企業の新入・中堅社員教育を任されるようになっていった。

東京で多忙な10年間を過ごした濱田隊員は、地元に帰ることを決めた。「ちょうど何か違うことをやりたいと思っていたとき、姉が県外に嫁いだので、地元に帰るのもありかな」そう思ったのがきっかけだ。
こうして、濱田隊員は(株)白鳳に入社し、物産観光施設「白鳳の里」の企画・販売・営業を担う統括マネージャーに就任。イベント企画やメディア対応・営業活動など、東京での経験が充分に生かされた。
「地元の基幹産業は農業だから、それらを使えばいいんだ」と、手当たり次第、イベントや展示会を開催した。施設内で出来ることは全部やった。白鳳の里といえば〝どんぐり料理〟で知られるが、どんぐりに着目して、どんぐり商品を企画・開発したのも濱田隊員である。
そんなある日、鳥取県中小家畜試験場から「どんぐりをもらえないか?」と連絡が入った。鳥取県で特徴のある豚をつくるために、どんぐりで飼育するというものだった。濱田隊員は快諾した。

3年後、研究が終了。しかし、世に出せる段階になって、県には売る手段がないという。
「飼育の難しい黒豚ちゃんを大切に育ててくださった農家さんに対して、それでは申し訳ない。私がやるしかない!」と決意した濱田隊員。10年務めた白鳳の里を退社し、黒豚の未来を担うと決めた。こうして、どんぐりを食べて育った黒豚(バークシャー種)は、鳥取県のブランド豚「ととりこ豚」となったのだ。

2006年、ととりこ豚を取り扱う(株)めぐみの代表に就任。「自然と人と地域の元気をつくる」をモットーに事業展開する会社だ。設立から3年後には、島根県出雲市役所斐川支所からの依頼で観光施設「出雲いりすの丘」内、ハム・ソーセージ工房の運営にも着手して、軌道に乗せた。
そして、ととりこ豚から数えて「足かけ15年」を機に、〝豚ちゃん〟からの卒業を決めた。両事業とも丸ごと引き継いでもらえる企業に出会えたことで、全てを託す覚悟ができたのだ。
今は、次のステップが濱田隊員を待っている。

「身近な自然環境をきちんと当たり前に保全する活動を、事業で出来たらいいなと思っています。20年間、様々なボランティアをしてきていますが、ボランティアでは人が倒れてしまうと終わりだし、資金がなくなれば終わってしまう。ですから、事業化していかないとダメだと思っています」


濱田隊員の掲げるテーマは大きい。「何十年かかるか分からないけれど、最終的にはね、地球環境、宇宙環境というぐらいの大きな意味で、身近な自然資源をきちんと当たり前に保全したい」のだ。
すでに、2年前から、山陰の自然資源を利用した健康増進プログラムを作成。鳥取大学での検証を経て、今年4月から、プログラムの普及啓発がスタートするという。
「私にひとつ特技があるとすれば、縦横無尽なネットワークを偏らず持っていること。老若男女ね」

頼まれたら何とかしてあげたいと動いてしまう、他人のために人生を賭けられるひと。その人柄に惹かれて、縦横無尽なネットワークはさらに豊かに拡大するだろう。今やっと、自身の叶えたい夢に邁進できる状況が整ったところだ。私たちは、濱田隊員から、ますます目が離せなくなる。

鳥取県米子市出身
(趣味?使命?)
1.地域振興
2.新しい事にチャレンジする事 ⇒・・・なので、今回の取り組みの中で何かのお役に立てる事を期待しています。
地域づくり(地域資源の掘り起こし、商品開発、地域の元気づくりなど)