大山山頂からの360度パノラマは誰もが認める西日本を代表する大展望だ。その風景の中でも弓ヶ浜半島の描く曲線は一際美しい。
 大山の麓から島根半島に向けて、美保の海に架かる砂の大天橋である。
 橋の先端・境港から島根半島東端の美保関・地蔵埼までの海岸線をつなぐと真半円を描いたように見える。まさに神が創り出した造形美だ。
 この造形・弓ヶ浜半島の成り立ちは本文で紹介された通り大変特異である。そして、この半島で人々は驚くような歴史を刻んできた。砂と闘い、共生し、大きな恵みをいただいた。
 日本有数の綿の生産地になったのは一例だ。そんな先人の足跡の一端でも知ることができれば、地域の未来が見えてくるに違いない。


special presenter

山陰いいもの探県隊 隊員
(公財)とっとりコンベンションビューロー理事長

鳥取県米子市在住。
大山が見えるエリアはひとつの文化圏として大山王国と名付け、圏域のファンづくりの事業を長く取り組んできた。近年は、たたら製鉄が盛んに行われた伯耆(日野川水系)、出雲(斐伊川水系など)の『たたら文化圏』をテーマに地域の魅力の深掘りに取り組む。

 白砂青松の弓ヶ浜半島は、砂でできた半島としては国内最大です。
 その形成の歴史は古く、10万年を超す複雑な砂の堆積と侵食の過程がありました。
 今の半島は、氷河時代が終わっておよそ1.2万年以降の地球が温暖化していくなかでできた浅い海に、以前からあった海底の高まりや大根島付近にあった玄武岩の高まりに寄り添うように日野川から流出した砂や石が堆積していったことが基になっています。
 半島の基部から遠く離れた内浜の砂の中に餅のように丸くなった小石があったり、できあがった砂浜の一部が侵食されてなくなったり、常に波や沿岸流とのせめぎ合いがありました。
 地球温暖化が進む現在、人間活動でできた外浜は著しい侵食にさらされています。
 この美しい半島、自然の微妙な動的バランスの中にある奇跡の半島だったのです。


special presenter

島根大学名誉教授
理学博士

鳥取県米子市在住。
昭和57年東北大学大学院理学研究科修了。島根半島・宍道湖中海ジオパークの専門員として、島根県東部から鳥取県西部の大地の魅力を紹介するジオパーク活動に取り組んでいる。
今回の弓ヶ浜半島の特集についてご協力いただきました。