探県記 Vol.106

雲州忠善刃物

(2017年4月)

UNSHU CHUZEN HAMONO

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  • 石原美和 隊員

  • 木内吾平キャプテン

創業120年の鍛冶屋さん「雲州忠善刃物」
叔父と甥のふたりで守り継ぐ高度な技術

 
かつて、たたら製鉄が盛んに行われていた奥出雲町。良質なその鉄を使って、最盛期には農工具刃物をつくる鍛冶屋さんが30軒を超える数あったといいます。けれど現在、残っているのは、わずかに2軒。今回、訪ねたのはそのうちの1軒、雲州忠善刃物です。

 
明治生まれの川島林太郎という鍛冶職人を初代に、匠の技を今に継承していらっしゃるのは、4代目となる川島久忠さんと川島俊春さん、叔父と甥のおふたりです。

 
〝カンカンカンカン〟通りまで響くリズミカルな鍛錬の音。雲州忠善刃物では、ちょうど作業の真っ最中。お邪魔にならないように、しばらくそっと見学することに。

 
天井まで煤(すす)で真っ黒になった作業場で仕事に打ち込むおふたり。職人の真剣な表情と厳しい眼差しは、ちょっと恐いくらい。息を詰めて、作業が一段落するのを待ちました。

 
きりの良いタイミングで作業を止めてくださったおふたりの表情は、なんとも柔和に一変。探県隊一行を親切に迎えてくださいました。
 
「すごく逞(たくま)しい腕ですね」と惚れ惚れする石原隊員。
「機械も使いますが、細かなところは手で打ちますからね。火傷だらけですよ」

 
「ずいぶん年季の入った機械ですね。操作も難しいんでしょうね」と木内キャプテン
「40年もののベルトハンマーです。どうです、やってみませんか。車のアクセルと同じですよ。強く踏むと速くなります」と勧められて、腰の深さまで掘られた穴に入り、800度の高温になる炉の前でスタンバイ。炉で熱して真っ赤になった鉄をベルトハンマーで連打する作業、なかなか様になっている木内キャプテンです。

 

素晴らしい出会いの最後に聞いた言葉は
「雲州忠善刃物は我々の代で終わりです」

 
雲州忠善刃物の人気商品は、切れ味抜群の包丁です。用途に合わせて素材・形・刃の長さなどが違うその数15種類。さらに、竹細工用のナタや、農具のカマやクワなど、全部で40種類以上の刃物を、割り込みから鍛錬、そして焼き入れ・研磨まで、熟練の技が費やされてつくられています。

 
さまざまなオーダーにも応える雲州忠善刃物では、こんなエピソードもありました。──結婚を決めた彼女に「手づくりの包丁をプレゼントしたい」といってきた地元の青年のために、ちゃんと手ほどきをして完成させたこと──さらに「結婚指輪を自分でつくりたいので玉鋼を譲って欲しい」といってきた青年がいて、出来上がりまでお世話したこと──なんて素敵なエピソードでしょう。
 
石原隊員も「以前から欲しかったの!」という念願の包丁をお買い上げです。
 
楽しくも貴重な体験をさせていただいた雲州忠善刃物で、最後に聞いたのはこんな言葉でした。
「雲州忠善刃物は我々の代で終わり。我々ができなくなれば店を閉めます」
素晴らしい出会いがあったと同時に、次の世代がいないという現状に打ちのめされてしまいました。もう為す術はないのでしょうか。

 

【アクセスについて】
●雲州忠善刃物へのアクセス/JR出雲三成駅より徒歩13分
●島根県仁多郡奥出雲町三成711-3
【WEBサイト】雲州忠善刃物
 
 

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