探県記 Vol.120

大正屋醤油店

(2017年10月)

TAISHOYA SHOYU TEN

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創業約100年、変わらぬ古式製法で長期自然熟成、昔ながらの杉桶で醸造する~大正屋醤油店

 
JR安来駅から日本海を背にして20㎞ほどの場所にある〝母里(もり)〟と呼ばれる地域は、『出雲国風土記』に縁ある土地。瑞々しい田んぼが広がる歴史の地に、モダンな黒い建物が現れます。その正体は、大正15年(1926)創業の、大正屋醤油店さん。すでに辺りには、芳ばしい醸造のかおりが漂っています。

 
案内してくださるのは、大正屋醤油店4代目の山本周作さん。
小幡美香隊員の旅館・お食事処でも、こちらのお醤油や金山寺みそを使っているということで、まずは、小幡隊員に、大正屋醤油店さんの魅力を伺ってみました。
 
「こちらのお醤油を使うようなったのは、私がマクロビオティックスのお料理をはじめたことがきっかけでした。地元産の大豆を使って、ゆっくり時間をかけて熟成されるお醤油は、安心で安全。食育にも熱心で、食事の大切さを伝えていらっしゃいます。そんな造り手の顔が見えるというのは素晴らしいことです」

 
大正屋醤油店さんのお醤油は、昔ながらの杉桶で、ゆっくり時間をかける古式製法。創業から約100年、その製法は変わっていません。
 
仕込みは、冬に仕込む寒仕込み。春から夏にかけて段々と〝もろみ〟が温まって、夏に発酵が開始。プクプクと、もろみから空気が上がってきて、香りも色も少しずつ変化。徐々にお醤油へと育っていきます。そして、秋になって発酵が終わると、熟成期間に入るのです。
こうして、ゆっくり、じっくり、時間をかけて熟成させて、仕込みから1年以上経ったもろみを、桶から出し、3日間かけてゆっくり搾ると、やっと生醤油の出来上がりです。

 

 

昔ながらのお醤油屋さんだからこそのおいしい品揃え
金山寺みそや麺つゆ、甘酒やアイスまで!

 
醸造蔵の階段を2階に上がると、そこには、巨大な杉桶が幾つも丸い口を開けていました。なにより印象的なのは、衛生的であるということ。床にも杉板が張られていて、清々しい空間になっています。

 
山本さんに教わって、小幡隊員も〝カイ棒〟で杉桶を混ぜてみることに。
「生きているっていうのが、よくわかります。桶の中でプクプクしてる。それにしても、この杉桶、深いですね!」
「こうやって混ぜて空気を入れることで、微生物が発酵してくれるんです。この桶で、高さ2m・幅2mですね。蔵に住みつく菌は300種類以上あり、菌の違いでそれぞれ香りが違ってきます。たとえば、バニラの香りだったり、バラの香りだったり」と山本さん。

 
「地元のファーム宇賀荘の大豆と、地元の農家さんが育てた野菜で作る〝金山寺みそ〟も大好きなんです。あったかいご飯に乗せても、もろきゅうにしても、本当においしいの!」という小幡隊員に、「同じ地元産の大豆と米と野菜で作りますから、相性がいいんです。元々、金山寺みその上澄みがお醤油だったんですよ」と山本さん。

 
醸造蔵にはショップも併設されていて、こぢんまりとした店舗ながら、こいくち・うすくち・甘露、そして三年熟成などの各種お醤油はもちろん、ぽんずや麺つゆなども充実。さらに、今人気の甘酒や、シャリシャリした食感の醤油アイスなども並んでいて、あれもこれもと欲しくなります。
日本の料理には欠かせない発酵食品、お醤油。自然熟成された本物の味で調えたなら、毎日の料理のおいしさも違ってくるはずと思えるのです。

 

【アクセスについて】
●大正屋醤油店のアクセス/JR安来駅からバスで約25分「東渡」下車、徒歩約5分
●島根県安来市伯太町東母里225-2
【WEBサイト】大正屋醤油店