探県記 Vol.52

絲原記念館・絲原家

(2015年12月)

ITOHARA KINENKAN
ITHOHARA KE

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たたら製鉄で栄華を誇った松江藩鉄師の
400年に渡る歴史と文化を一堂に展示

 
島根県の奥出雲地方は、アニメ映画『もののけ姫』の中でも描かれた日本古来の製鉄法、“たたら”で栄えた地。たたらの経営者は“鉄師”と呼ばれ、松江藩の鉄師筆頭御三家“絲原家、田部家、櫻井家”が有名です。
 

奥出雲の静かな森の中、小川を渡り、木造の立派な門を潜ると、もうそこは別世界。
 

絲原記念館は、昭和55年(1980)に開館。鉄師で名を馳せた絲原家の、繁栄を極めた歴史を紹介する博物館で、たたらの膨大な資料をはじめ、家伝の美術工芸品や有形民俗資料や古文書などが多数展示されています。
 

「模型を使って、たたらが非常にわかりやすく説明されているのが、こちらの記念館の特徴ですね」と熱心に見入るキャプテンと足立木次駅長。展示品の中でも特に、雲州そろばんに興味津々です。絲原家は、たたらの他にも札座(ふだざ)といって現在の銀行のような仕事もしていました。
 
なんでも、たたらと雲州そろばんには関係があって、たたら製鉄で造られる上質な刃物があったからこそ、黒檀や黒柿など硬い木材を緻密に細工することができたのだそうです。
 

映画・ドラマに使用される歴史ある豪家
たっぷり時間をかけてめぐりたい

 

 

絲原家の居宅は、江戸時代後期に建築された国の有形登録文化財。松江藩主の本陣としても利用された延床面積約493坪、部屋数約40室の大邸宅で、有名な映画やテレビドラマのロケ地にもなっているほどです。
 

居宅から眺めるのは、奥出雲の山々を借景とした広さ約360坪の出雲流庭園。この場所は、元たたらの原料である砂鉄を採取した跡地で、約50年の歳月を費やして完成させたもの。その特徴である書院前の飛び石組は、松江藩7代藩主・松平不昧公が、京都から庭師を招いて考案した ものと伝わってます。
 

さらに奥に広がるのは、総面積約2,060坪の林間散策路“洗心乃路”。整備された遊歩道を歩けば、奥出雲の山野草や茶花、樹木などを観賞することができます。
 
広大な敷地に記念館、居宅、散策路と展開する、絲原記念館・絲原家。奥出雲の美しい自然の中、一時代を築いた名家の歴史と文化に、ただただ圧倒される場所なのです。

 
【アクセスについて】
●絲原記念館・絲原家へのアクセス/JR木次線出雲三成駅から車で約6分
●島根県仁多郡奥出雲町大谷856-18

【WEBサイト】絲原記念館