探県記 Vol.83

由志園

(2016年8月)

YUUSHIEN

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日本一の牡丹の苗の生産量を誇る大根島に
美しい回遊式日本庭園を有する楽園がある。

 
島根県と鳥取県の真ん中に、日本で5番目に大きな湖〝中海(なかうみ)〟があり、その中に、周囲わずか12㎞の小さな島が浮かんでいます。名前は、大根島(だいこんしま)。約20万年前の噴火活動によって誕生した、この火山の島は、火山灰のお陰で黒ぼく土壌となり、特産品を〝高麗人蔘〟と〝牡丹の花〟とする、周辺のどことも似ていない豊かな島になりました。
 

探県隊一行が訪れたのは、牡丹と雲州人蔘の里『由志園』。一年を通して〝出雲の國の箱庭〟と呼ばれる回遊式日本庭園が素晴らしいと評判のスポットです。


江戸時代のお役所〝人蔘方〟の、当時の建物を再現したという長屋門を入って、出雲の國の箱庭へ。
案内してくださるのは、庭師の菅沼さんです。
「当園の庭は、出雲地方の代表的な風景をイメージした出雲式庭園になっています。まず最初にあるのは、中海を模した地泉で、中島を大根島に見立てています」


 

 
庭園を中ほどまで来ると、大根島の特許技術によって一年中、満開の牡丹の花が観られる〝牡丹の館〟が出現。現在、世界トップガーデナー・石原和幸氏が手がけた、苔と牡丹の花が織りなす不思議な世界に迷い込むことができます。イメージしたのは「風の谷のナウシカの秘密の地下植物園」。ひんやりと冷たい空気が、より雰囲気を盛り上げてくれます。

 
「毎日、牡丹の花を咲かせるにはご苦労があるんでしょうね。館の室温はどのくらいなんですか?」と木内キャプテン。
「牡丹の花の開花は約1週間ですから、ほぼ毎日、順次植え替えをしています。館内は常に17℃前後に保っています」と菅沼さん。
 

 

珍しい高麗人参の赤い実は南天の実のようで
苦いはずの人参茶はうれしいことに甘かった。

 

 
牡丹の館を出ると、宍道湖を模した地泉~八岐大蛇退治の物語をモチーフにした竜渓滝~奥出雲の渓谷~大根島の北岸から見た中海の岩礁と波を、石組みと白砂で表現した枯山水庭園~等々。見所たっぷりの、まさに出雲の國の箱庭。庭師の皆さんによって日々丹精される庭園が、いつでも来園者の目を楽しませてくれています。
 

期間限定でいえば、牡丹の花の咲く春の季節。45000輪もの牡丹の花を、中海を模した地泉を埋め尽くすように浮かべられる光景は、ゴージャスで贅沢で目の保養。「なんだか、もったいない」と思われるかもしれませんが、満開を過ぎる前に花を摘みとることは、牡丹の苗を育てるために必要な作業。本来なら捨てられても仕方のない花を、こうして浮かべているのだそう。なんて素晴らしいアイデアでしょう。
 

出雲の國の箱庭を回遊し、再び人蔘方に戻ってくると、幸運なことに、赤い実をつたけ高麗人参を見ることができました。
 
「高麗人参が育つには、何年必要なんです?」と小泉隊員。
「6年かかります。こうして見ていただけるのは、おそらく日本でここだけでしょう」と応えてくださったのは、由志園の門脇竜也さんです。
 

南天のような高麗人参の赤い実を見ながら、一行は人蔘茶の試飲。
「とても苦いイメージがあったんですが、なんだか甘い感じがしますね」と木内キャプテン。
昔は雑味が残っていて苦みがあったのだそうですが、今の人蔘茶は雑味がきれいに取り除かれているため、飲みやすくなっているのだそうです。
 
優雅な牡丹の花と、珍しい高麗人参と、美しい日本庭園が、特別な時間を紡いでくれる由志園。中海に浮かぶ豊かな小島に花開いた、楽園のような場所でした。
 
【アクセスについて】
●由志園へのアクセス/JR松江駅から車で25分
●島根県松江市八束町波入1260-2

【WEBサイト】由志園