探県記 Vol.94

湖山池遊覧船

(2016年12月)

KOYAMAIKE YURANSEN

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山陰海岸ジオパークエリアの自然と歴史に触れて日本一の湖山池をぐるっと一周遊覧船

 
鳥取市街から程近いのどかな場所に、日本で一番面積の広い池「湖山池(こやまいけ)」が広がっています。そのスケールは、周囲約18㎞・平均水深約2.7m・面積約7㎢。もとは、日本海とつながる入海だったのが、鳥取砂丘の砂の移動によって水路が埋まり、日本一大きな自然の池になったのだそうです。かつて海だった湖山池は、現在、海水と淡水が混じる汽水池で、湖上には、それぞれに昔話が伝わる5つの島が浮かんでいます。
 
山陰海岸ジオパークエリアのジオスポットでもある湖山池を、池上から楽しめると聞きつけて訪れたのが「湖山池遊覧船」。その就航は意外に新しく平成26年10月のことです。
 

遊覧船のりばで、船長の北村英誉さんと、語り部の霜村弘美さんとごあいさつ。冷暖房完備という快適な船に乗り込んで、いよいよ遊覧に出発です。
 

「湖山池は約400年前に海と離されて汽水池となり、一番深い所で約70mの水深があります。窓を開けているとボラが飛び込んで来ることもありますのでお気をつけください」と霜村さんの説明があったと同時に、水面を跳ねるボラの姿。どうやら歓迎されているようです。
 

語り部さんの流れるような名調子に
聞き惚れながらの約40分間の船旅

 

目の前に見えてきたのは、水中に建つ朱色の鳥居。なんとも不思議な雰囲気です。
「こちらは「猫島」です。残念ながら猫はいませんが、猫にまつわる伝説が残されており、鳥居の内には弁財天が祭られています」
 

遊覧船は、湖山池で一番大きな島「青島」を中心に、時計回りとは逆方向に進みます。
「あの形、まるで〝ひょうたん島〟だよね」と木内キャプテンが評するのが、唯一、陸との橋が架けられている青島です。
「沿道に沿って約500本の桜が手植えされており、満開の時期はそれは見事。春には花見遊覧を楽しんでいただけます」と霜村さん。
 

周遊も半分くらい来た所に「津生島(つぶしま)」があり、その対岸の小高い丘に見えてきたのが「阿弥陀堂(あみだどう)」。鳥取の医師であり新作民藝の指導者であった吉田璋也が建てた茶室です。
 
次に現れたのは、県の無形文化財に指定されている三津(みつ)地区の「石がま跡」。
「ここ三津から見る日の出が最も美しいといわれています」と霜村さん。湖山池特有の漁法「石がま漁」の石組が残るスポットで、その昔、ひとつの石がまで一度に300匹の魚が獲れたのだそうです。
 

続いて、木が一本も生えていない「団子島」から、戦の砦(とりで)だった「防己尾(つづらお)城跡」など、名所も話題も豊富な湖山池遊覧。語り部・霜村さんの流れるような名調子で、あっという間の40分間でした。
 
通常運航は、3月~11月末。冬季に限っては10名から予約便が出るとのこと。
桜の季節の花見遊覧に、新緑が水面に映える夏の遊覧、紅葉の時期も美しい「湖山池・語り部・遊覧船」。山陰海岸ジオパークエリアの、これからますます人気になるだろう穴場スポットです。
 

 
【アクセスについて】
●湖山池遊覧船へのアクセス/JR鳥取駅より路線バスで「青島公園」下車、徒歩2分
●鳥取県鳥取市高住754-19

【WEBサイト】湖山池遊覧船