鳥取県内には牛骨ダシのスープを使ったラーメン、いわゆる「牛骨ラーメン」を提供する店が70を超える数存在していて、その歴史は古く半世紀以上昔から続く店舗も数多く存在しています。
鳥取の牛骨ラーメンを応援し発信する任意団体「鳥取牛骨ラーメン応麵団」が2009年に結成されましたが、それ以前は「牛骨ラーメン」と呼ばれるラーメンを提供するお店は一軒もありませんでした。なぜなら提供しているお店にとって「牛骨ラーメン」とは『普通のラーメン』であり『昔ながらの中華そば』だったのです。しかしこの昔ながらの普通のラーメンたちは、牛骨で出汁を取ったスープを使うという他の地域にはほとんど無い大きな特徴がありました。
なぜ鳥取県内に牛骨スープのラーメンができたのでしょうか。調べてみるとその濫觴は中国大陸の蘭州まで遡ります。蘭州市内には牛骨スープと牛肉を乗せた「蘭州牛肉拉麺」を提供する店舗が3000軒ほどあるといわれています。蘭州のある甘粛省は回教徒が多い地域であり、豚食文化のある中国料理の中で牛食文化が発達していったそうです。
そして第二次世界大戦中、旧満州に渡った日本人と現地の中国人との交流の中で「牛骨スープのラーメン」と出会いました。戦後、旧満州から引き揚げ鳥取県に戻ってきた方が飲食店を営み、その時に中国人から習った「牛骨スープのラーメン」を出し始めたといわれています。
また、豚骨や鶏骨ではなく『牛骨』が根付いた理由として、鳥取県は畜産業が非常に盛んで、日本三大牛馬市のひとつともいわれる「大山博労座」を有していました。飲食店で日々提供するには使用素材そのものが「安価である」ことと「安定して手に入れることができる」ことが必要です。つまり鳥取県の産業や文化に裏付けられたからこそ根付いたのです。言わばこの鳥取牛骨ラーメンは、提供店舗だけではなく地元の様々な人たちと共に現在まで培われてきた食文化なのです。
鳥取県の歴史や文化を語るときに「鳥取牛骨ラーメン」という名脇役を添えていただければベリー牛ッドな話題になることでしょう。
三徳山三佛寺 次長
鳥取牛骨ラーメン応麺団
団長
鳥取県三朝町出身。山陰には食・歴史・風習など多くの魅力的な独自文化が残されています。また古刹と呼ばれる社寺も数多くあり、日本原風景が残されているのが山陰だと思います。様々な魅力が発信できればと思っています。
私のアニメ作品、「秘密結社 鷹の爪(ひみつけっしゃ たかのつめ)」に登場してくる吉田くんは、旧吉田村[現 雲南市(うんなんし)]出身という設定で、劇中にも何度か吉田村が登場してきた。吉田村を含むこの一帯は、古くから製鉄の里と知られ、江戸時代には全国で流通する鉄の9割近くも供給してきたという。しかし島根と金属のつながりは、鉄だけに限らない。荒神谷(こうじんだに)遺跡からは358本もの銅剣、加茂岩倉(かもいわくら)遺跡からは銅鐸(どうたく)が出土。世界遺産にも指定された石見銀山(いわみぎんざん)。そしてこの製鉄。これは何かの偶然だろうか?古事記にも頻繁に登場するのは、古くから多くの人が暮らし、栄えてきたのは間違いない。そして古今東西、その混沌から、新しい技術や文化が生まれるのは常識だ。西欧では錬金術という、科学とも魔術ともつかない学問があった。島根には、出雲大社をはじめとする、特異な宗教文化が生まれ、製鉄も宗教と深く結びつく。そんな深い歴史的バックボーンを持つと言われると、吉田くんのあの仏頂面にも、何か深い意味がありそうな気もするのでは?実際に意味はないが。
FROGMAN(フロッグマン) 「秘密結社鷹の爪」を生んだ アニメーション作家
アニメーション監督・株式会社ディーエルイー取締役。10代より映画ドラマの制作スタッフとして従事。30歳に、錦織良成監督の『白い船』のスタッフとして、山陰を訪れそのまま島根県に定住。2015年、山陰いいもの探県隊に入隊。