ヴィオラという弦楽器をご存知だろうか。姿かたちはヴァイオリンと全く同じなのだが、大きさがヴァイオリンよりもひと回り大きい。大きくなる分、音域は低くなる。中音域という、ちょうど人の声と同じ高さを担当し、ヴァイオリンほどの派手さはないものの、くすんだ「地味」な音色が特徴だ。
山陰の風土の特徴は、晴れていてもどこか雲がこんもり漂っているあか抜けない空、曇天が続いたときの重厚な空気感。上述したヴィオラの音色は、まさに山陰の地味そのものだ。音楽を奏で、創るには自然からのヒントが必要不可欠。大作曲家ベートーヴェンは、ウィーン郊外ハイリゲンシュタットの森を散歩しながら曲の構想を練ったし、その後継者とされるJ.ブラームスも同様、散歩を好み、アルプスの山並みに囲まれた静かな湖畔にて、数々の傑作を生み出した。自然豊かな山陰は、極上の音楽を奏でるためのヒントが満載だ。6月17日から運行開始されるトワイライトエクスプレス瑞風、私はその車内にて生演奏を担当する。旅を演出する花にはならないかもしれないが、お客様の記憶にいつの間にか浸透しているような「地味」な音色をお届けしたいと思っている。
鳥取県北栄町出身。
5歳よりヴァイオリンを始める。早稲田大学在学中、ヴィオラの渋くて落ち着いた音色に魅せられ、音楽家として生きることを決意。周囲から惜しまれながらも大学を中退。愛知県立芸術大学音楽学部を卒業。「歌」をベースにした味わい深い音色と、アンサンブルにおける抜群の安定感が各方面から高い評価を得ている、注目のヴィオラ奏者である。
2017年1月に3作目のCDをリリース。
すぐ目の前には、青い日本海が広がっていた。益田市の小高い丘の上に建つ『レストラン・ボンヌママン・ノブ』は、オープンして16年になるフレンチのお店。オーナーシェフは、上田幸治さん。「今日は夏みかんをたくさんいただいたので、お肉をさっぱりさせたくてソースに使ってみました」お店で使う野菜は、ほとんどが地元産。お世話になっている地域の生産者さんたちに、スポットを当てたいとの思いがある。
東京の専門学校に進学した当時は、「有名になりたい。東京が絶対」と考えていたが、フランス研修でその思いは一変する。「友人とリヨン郊外へ行き、地元の小さなお店に入ったんです。高級な食材も、高価なカトラリーも使っていないのだけれど、季節の食材で作る料理は本当においしいし、まわりの人たちがとても楽しそうに暮らしている。そのとき気づいたんです。心の豊かさの方が人間らしい。俺、こういうお店がやりたい!そうなると東京ではなく、益田だよなって」あの日19歳で見た夢を、29歳で実現させた上田シェフ。「益田での暮らしには、物質的ではない、フランスで感じた精神的なしあわせがあります」と清々しい。
芝生のテラスに出れば、偶然にも、山陰本線を走る“瑞風”が見える立地。上田シェフは、車内で提供される料理の開発・監修に携わる“食の匠”のひとりに抜擢されている。
『レストラン・ボンヌママン・ノブ』
オーナーシェフ
島根県益田市出身。
実家は4代続く老舗『料亭 上田』。高校卒業後、エコール辻東京に進学しフレンチシェフを目指す。フランス研修を経て、卒業後、28歳まで東京の高級レストランで修行。益田に帰った翌年の2001年、29歳で『レストラン・ボンヌママン・ノブ』をオープンさせた。
島根県益田市高津町ロ485-18 TEL:0856‐23‐2060
アクセス:JR益田駅より車で10分 http://www.bonne-maman-nobu.com/