「一体それは何なのだ!?」という時がごくたまにある。「何なのだ?」ではなく「何なのだ!?」と感嘆符がつく、どうにもモヤモヤした気分が残る時である。早く答えを!と脳がせっついているのである。
とうふちくわは間違いなく“それ”だ。とうふとちくわが関連していることは容易に推測できる。しかしとうふは四角く柔らかく、ちくわは円柱で弾力がある、原材料は大豆と魚、作り方も含めて共通項が見当たらぬ。水と油だが「とうふちくわ」と名物になっている、これは如何に。
時計は江戸に遡る。池田侯が質素倹約のため「魚ではなく大豆を食べるように」と庶民に奨励したことで、水と油はひとつになった。木綿豆腐をつぶして白身魚のすり身と7:3の割合で混ぜると、見事な“すり身”に進化。竹に巻き付けて蒸しあげると「カタチはちくわ、食べるとふっくら、噛むとほのかに大豆の味と香り」という、とうふちくわだけの絶妙なる味わいと相成った。以来200年以上にわたり鳥取の人々に愛され続け、今やカレー味やショウガとネギを練り込んだ「冷奴とうふちくわ」も出現、もはやとうふを超えた!?
食は地域文化だが、同時に地域の英知でもあると、とうふちくわは教えてくれる。機転力と創造性に溢れたとうふちくわは、コロンブスの卵といってもいい。ゆえにとうふちくわの穴からごく日常の景色を見ると歴史的な発見がある!…と一瞬でも思った方、私と竹輪の友ですね。
山陰いいもの探県隊 隊員
1昭和44年鳥取市生まれ。法政大学法学部卒業。
宝島社、現在は鳥取市観光プロデューサーとして食文化を中心に鳥取を盛り上げる。
鳥取情報文化研究所 所長。