今から約20万年前のことー

湿地で起きた度重なる火山活動によって流れ出た熔岩が少しずつ累積し、小さな島の原型が生まれました。

その後、長い歳月をかけて周囲に海水が入り込んで汽水湖になると、真ん中辺りに小さな島が姿を現しました。付けられた名前は「大根島」。

外周約12km、面積約6k㎡、現在の島の人口は約3000人。

国内にわずか4島しかないという湖の中にある有人島のひとつが、これからご紹介する大根島です。

のどかな景色が迎えてくれる島は、見かけによらずかなり個性的でした。

大根島の観光情報はコチラ

松江観光協会 八束支部

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いくつもの自然現象が重なって平らかで豊かで複雑な島が生まれた

島といえば断崖絶壁の海岸線が思い浮かびますが、大根島にはそうした荒々しい自然は見当たりません。
最高地点は島のほぼ中央、火口から噴き出たスコリア(玄武岩質の軽石)から成る標高42mの大塚山ですが、それ以外は実に緩やかで、不思議なほどフラットな地形。
島のどこにいても360度見晴らしがよく、ほとんど起伏のない平らかな島であることがわかります。
その理由は、大根島の土台である玄武岩の熔岩は粘り気が弱いため堆積せず、流れ出ては広がり、お皿を伏せたような形状になったからでした。

火山活動で生まれた大根島の地下は、リング状の熔岩洞窟が縦横無尽につながっていて、モグラの巣のように広がっているといいます。
現在、島内にある熔岩洞窟で、人が中に入ることができるのは国指定特別天然記念物の「幽鬼洞」と、国指定天然記念物の「竜渓洞」の2つ。そのうち、一般に見学が可能なのは竜渓洞だけで、専門のガイドさんに扉の鍵を開けてもらう必要があります。洞窟内はそれほど希少で、それほど危険でもあるということなのです。

淡水レンズ

汽水に囲まれた大根島には川さえありませんが、淡水レンズから湧き出す水が飲用水や生活用水として利用され、島の人々と作物を育てる「命の水」となっているのです。

大根島の複雑な自然環境は、2017年、日本ジオパーク認定された「島根半島・宍道湖中海ジオパーク」のエリア内。熔岩洞窟、スコリア丘(大塚山)、湧き水(親水公園)など島の随所で、知れば知るほどおもしろい火山活動の不思議な歴史に出会えるはずです。

湧き水

国指定特別天然記念物 幽鬼洞(ゆうきどう)

民家の真下にあるという大変珍しい熔岩洞窟。「特別」の付く天然記念物の熔岩洞窟は、大根島の幽鬼洞と秋芳洞(山口県)の2つだけ。一般公開はされていませんが、約100mのコースが確認されています。

国指定天然記念物 竜渓洞(りゅうけいどう)

島内で唯一見学可能な熔岩洞窟。洞窟内で火口の様子が確認できるのは世界的にも大変希少。7月・8月の暑い時期、洞内へと下りる階段の入り口には、急激な温度変化によって天井付近に小さな雲が発生。神秘的な「入口雲」は一見の価値があります。

(島根県自然観察指導員)
洞窟ガイド 門脇和也さん

大根島の土壌は主に、島根県のほぼ中央にそびえる三瓶山が度々噴火した際に降り積もった火山灰由来の黒ボク土です。 水はけや通気性が良いうえに有機物を豊富に含むこの肥沃な土壌と、淡水レンズからの湧き水のおかげで、周辺のどことも似ていない高収益作物の特産品が育てられています。

湧き水

島の人々の根気と努力と愛情で守り続ける特産物がある

大根島の土壌は主に、島根県のほぼ中央にそびえる三瓶山が度々噴火した際に降り積もった火山灰由来の黒ボク土です。 水はけや通気性が良いうえに有機物を豊富に含むこの肥沃な土壌と、淡水レンズからの湧き水のおかげで、周辺のどことも似ていない高収益作物の特産品が育てられています。

雲州人参

「雲州人参」三大産地のひとつ

大根島では、県内で唯一、雲州人参(高麗人参)が栽培されています。
その歴史は、江戸時代、幕府が医薬行政の立場から、当時極めて貴重とされていた高麗人参を一般にも広めようと、1727年、「御種人参」と名付けて諸大名に種子を分け与えたことからはじまりました。
このとき、全国24ヶ所で栽培が試みられたといいますが、成功するのは難しく、徐々に減少。現在に至るまで栽培が続けられている主な生産地は、長野、福島(会津)、そして、ここ大根島の3ヶ所だけとなっています。

ほとんどの土地で成功しなかった人参栽培ですが、なぜ大根島で大成したのでしょう。
やはりそれは、特殊な地形の上にある肥沃な黒ボク土と、淡水レンズからの湧き水があったおかげでした。
さらに、植え付けから収穫までに6年間を必要とし、さらに、薬効のある良質な人参を収穫した後の畑は栄養分のほとんどを失っていて、収穫後15年以上置かなければ同じ畑で人参を作ることはできません。この長期に渡る栽培サイクルが他所ではネックになったのでしょう。
しかし大根島では、その困難を逆手にとって「雲州人参」という高収益作物の特産品化に成功しています。

「牡丹の花」日本一の生産地

「牡丹の花」日本一の生産地

由志園

大根島に最初に牡丹が伝わったのは江戸時代中期、お寺の住職が遠州(静岡県)の秋葉山から薬用として持ち帰り、境内に植えたのがはじまりと伝わります。

それから時が流れて、飛躍的に生産量が拡大したのは「芍薬の根に牡丹の芽を接ぐ技術」が確率された昭和30年代頃。こうして、開花率の高い大根島の牡丹の苗は、全国へと届けられるようになっていきました。

大根島の牡丹が全国に知れ渡った大きな要因のひとつに、島の女性たちによる行商があります。
背負い籠いっぱいに牡丹の苗を詰め込んだ大根島の女性たちは、船やバスや鉄道を乗り継いで、全国津々浦々まで売り歩きました。それは島で待つ家族のため、 延いては、産業の乏しかった島の経済を支えるため。
こうした島の女性たちの深い愛情が、全国で牡丹の花を咲かせたのです。

昭和60年代には促成栽培技術が、平成8年には抑制栽培技術が開発され、一年を通して牡丹の花を咲かせることに成功。牡丹開花調整技術の特許も取得しています。
栽培技術の確立によって、現在、大根島の牡丹の苗はアジア、ヨーロッパ、北米などへ輸出されて、海外の愛好家にも親しまれるようになっています。

高収益作物である雲州人参も牡丹も、あらゆる農作物と同等かそれ以上に、手間と時間と、技術と愛情が注がれています。
近年では、「担い手育成協定制度」を締結して、若手後継者の育成に積極的に取り組んでいる革新的な地元企業の活躍に目を見張るものがあります。
そこには、歴史と文化の継承を使命として、良い意味で「職人気質をつくらない」今の時代に適ったメソッドを実践する新しい働き方がありました。

由志園

1万坪の日本庭園に花咲く牡丹や花々を眺めながら滋味豊かな郷土料理が堪能できる牡丹と高麗人参の里。

webサイト
https://www.yuushien.com

寒い季節にいただきたい水にまつわる冬の味覚

島根県松江市は「水の都」と呼ばれています。
水の都のシンボルである宍道湖は、大橋川で中海とつながり、境水道を通って日本海まで続いています。
宍道湖と中海は塩分濃度こそ異なりますが、ともに海水と淡水が混ざり合う汽水湖で、海の生物と淡水の生物が共存する豊かな環境を誇っています。
その理由は、河川の最も下流に位置する汽水域であること。たくさんの栄養分が流入する汽水エリアは植物プランクトンが豊富で、これをエサとして貝類や動物プランクトンも増えていきます。さらに、それらを求めて魚たちが集まってくるのです。
ではここで、寒い季節だからこそおいしくなる、水の都にまつわる冬の味覚をご紹介しましょう。

冬こそ食べていただきたい「寒ウナギ」

「土用の丑の日」というくらいですからウナギは夏のイメージ!?
一般に、夏の暑さを乗りるために精のつくウナギを食べる習慣ができあがっていますが、旨味が増すのは、冬季に栄養を蓄えた寒ウナギだともいわれています。
今でこそ漁獲量は激減しましたが、宍道湖と中海で獲れる天然ウナギは大変有名でした。明治期頃までは、大阪へとウナギを出荷し、運んだ道のりは「うなぎ街道」と呼ばれていたほどです。

現在、天然物にはなかなかお目にかかれませんが、良質な国産養殖にこだわり、愛知・鹿児島・徳島からその時に最もおいしいウナギを仕入れ、関西風の調理法で提供してくれる老舗、大正3年創業の「うなぎ処山美世」さんがあります。1尾200g超という大きなウナギを扱う全国でも数少ないお店です。

入荷から調理するまでの数日間は必ず、ミネラル豊富な地下水が流れる店内の生け簀で泳がせるのも山美世さん流。秘伝のタレで香ばしく焼いた蒲焼き、素材の味を楽しむ白焼き、さらには、缶詰・ライスバーガー・肝の煮付け・内蔵の白みそ漬けなどお土産品も充実していて、全国発送も行われています。
島根県側に中海を見て、鳥取県側に江島大橋(通称ベタ踏み坂)がそびえるという、お店のロケーションも話題です。

山美世

島根県松江市八束町江島1128-10
営業時間 : 11:00~16:00 (LO 14:30)
お問い合わせ : 0852-76-3198
定休日 : なし(但し、1月1日~7日、メンテナンスによる不定休あり)
アクセス : JR山陰本線「松江駅」より車で約30分

白濁するほど濃くて大粒な「寒シジミ」

シジミの旬は年に2回あるってご存じですか?
普段、何気なくいただいているシジミですが、土用シジミと呼ばれる夏と、寒シジミと呼ばれ冬の、年に2回の旬があるといわれています。12月から3月上旬に獲れる寒シジミは、越冬のために湖底深くもぐり栄養をギュッと蓄えて、身の入りも良く旨味を増して大粒に育つのだそう。
肝臓の働きを助ける栄養素が多く含まれているため、むかしから飲酒後のシメや二日酔いの朝食に好まれていますが、島根県東部では大粒の貝がたっぷり入ったシジミ汁はソウルフードの代表格。濃いシジミエキスが溶け出して白く濁るのが特徴です。

「黒田セリ」は日本一の折り紙付き

かの北大路魯山人が「日本一」の折り紙を付けた松江を代表する高級野菜 !
江戸時代より、松江市黒田町一帯の沼地で栽培がはじまったと伝わる黒田セリは、11月から2月頃までの4ヶ月間だけ味わえる「冬の松江の宝物」と称される貴重な野菜です。
寒さ厳しい時期、冷たい水を張ったセリ畑で中腰になって行われる収穫は重労働。出荷するため一本一本丁寧に洗われ揃えられる工程も寒さとの戦いです。そんな厳しさゆえに収穫量は減っていますが、松江の食文化を守るために努力する生産者さんのおかげで、シャキシャキの歯応えと香り豊かな黒田セリは、今も地元の人々に愛され続けています。

黒田セリの葉や茎は、お鍋や天ぷら、出雲そばや蒸し寿司や鯛茶漬けの薬味として。さらに根っこは、天ぷらやすき焼き、しゃぶしゃぶにしてもおいしく、捨てるところなくいただけるのも「日本一」の所以です。
黒田セリの地元である松江市黒田町にある「京らぎ 黒田店」さんは、2月末頃までセリ料理がメニューに登場するお店。京らぎさんで使用されている黒田セリは、「日本一と称えられる郷土野菜を自分たちの代で絶やせない」という気概で生産を続ける野津宏三さんの畑で大切に育てられ、丁寧に収穫されたもの。冬の味覚のおいしい風物詩、食べれば心まで豊かに暖かくなるんでしょう。

京らぎ 黒田店

島根県松江市黒田町512-5
営業時間:11:00〜14:00
     17:00〜20:00
お問い合わせ:0852-25-2233
定休日:毎週月曜、第1、3火曜
アクセス:JR山陰本線「松江駅」より市営バスで17分「堀川遊覧船乗場」バス停下車すぐ

大根島は火山の噴火によってできた島ですが、火山島ではありません。

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