鳥取県日野郡日野町と岡山県新見市との県境に位置する明地峠の雲海。晴れた日には遠く大山を望む。11月中旬から12月上旬頃、気温がぐんと下がった晴れの日の夜明け前から早朝にかけてが雲海の見頃時期とされ、標高約650mの展望台は絶好の撮影スポット。
Photo:Takashi Karaki
「たたら製鉄」とは、かつて全国各地で操業が行われていた日本古来の製鉄法。山や川から採れる砂鉄を原料とし、木炭の火力を用いて製錬することで鉄を得てきました。ことに山陰地方一帯は花崗岩(かこうがん)から成り立つ地層で、不純物の少ない良質な真砂砂鉄が豊富に採れるエリア。加えて製鉄には欠かせない豊かな水と森林に恵まれたことで、日本のたたら製鉄一大産地となったのです。出雲国(いずも/島根県)では、江戸中期から領内の9鉄師に藩の所有する山林を木炭産出用の山として貸与するなど独占的な経営を保証しました。
その中でも、松江藩鉄師御三家として台頭したのが田部(たなべ)家・絲原(いとはら)家・櫻井(さくらい)家でした。たたら製鉄は藩庫を潤す重要な産業として、松江藩は様々な政策により、鉄山師たちを手厚く庇護しました。一方、伯耆国(ほうき/鳥取県)では、鳥取藩はいわゆる放任主義。支援や救済など行わない代わりに、届けを出して年貢を納めさえすれば、誰もが製鉄操業を営む鉄山師になれたのです。こうして伯耆国奥日野エリアには近藤家を筆頭に当時大小20以上の鉄山師が割拠していたといいます。
江戸時代から明治時代にかけて、山陰のたたら経営者「鉄山師・鉄師」たちは、日本の産業発展を支えながら、地域経済の活性化と文化の発展に貢献したのです。
近藤家が明治22年~32年まで操業。操業当時、東京帝国大学の俵国一博士が行った現地調査を基に平成20年に発掘調査が実施され、高殿や製鉄炉跡などが確認された学術的にも貴重な遺跡。
鳥取県日野郡日野町中菅
アクセス:JR上菅駅より徒歩約1時間
お問い合わせ:0859-72-0249
(日野町商工会内たたら顕彰会)
※専任者はいないため折り返し連絡
田部家が経営した菅谷たたら山内に保存される高殿は、世界で唯一残る江戸時代の製鉄工場。国の重要有形民俗文化財に指定。周囲には元小屋や大銅場などの跡形が点在。TWILIGHT EXPRESS瑞風の立ち寄りルートでもある。
島根県雲南市吉田町4210-2
アクセス:JR木次線・木次駅よりタクシーで約30分
お問い合わせ:0854-74-0350