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Vol.29

乳房杉

 
 

巨大で、不思議で、神々しい
推定800歳のモンスターとの遭遇。

 
隠岐島後の最高峰、標高608mの大満寺山、その北側を走る林道沿いで車を降りると、思わず息を呑む光景に出会います。

鳥居の先に現れるのは、樹齢800年、高さ38m、幹の太さ9.6mの巨木。それはまるで、神々しいモンスターです。

主幹は地上4〜8mのところで15本に分岐、その各々から大小24個の乳房状の根が垂れ下がっていて、その形状から、乳房杉(ちちすぎ)という名がつけられています。
しかし、スーッと真っ直ぐ天へと伸びる姿が杉の木のイメージなだけに、この姿、とても杉とは思えないのです。

それにしても、あまりに巨大で、不思議なほど奇態で、神々しい。
誰もが最初に発するのは「お〜〜〜!」という感嘆の声。
ただならぬ存在感に圧倒されてしまうのです。
 
 

日本固有の巨木信仰のルーツ
ただならぬ存在感に、思わず合掌。

 

岩倉の乳房杉

古来、日本には、固有の土俗信仰である山岳信仰・巨木信仰がありました。
まさに、この場所は、日本の信仰のルーツである巨木信仰を今に伝える重要なスポット。ひんやりと霊気さえ漂って、思わず手を合わせたくなる超自然的な威力があります。

この乳房杉は、岩倉神社の御神体。つまり、岩倉神社は鳥居と御神体だけで、社殿というものがないのです。

また、乳房杉の周辺は、玄武岩の転石が積み重なってできた「岩倉の風穴」と呼ばれる珍しい地形。転石のすき間から、真夏でも冷たい風が吹き出しています。

そんな特殊な自然現象によって、周辺にはアカダモ、イチイ、オニグルミなど、北方系や高山性の植物が多く生育。離島となって独自の進化を遂げてきた、隠岐の神秘性は尽きません。
 
【アクセスについて】
●乳房杉へのアクセス 西郷港より車で約70分
●隠岐の島町布施
【WEBサイト】乳房杉