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Vol.41

柿木村有機野菜

 

昔ながらの有機農業は、
日本の農業の未来なのかもしれない。

 

島根県の最南端、広島県と山口県の県境に位置する中山間地に、「有機農業=柿木村」として知られる島根県鹿足郡吉賀町柿木村があります。
 
最初の一歩は、オイルショック後の昭和50年頃、「自給力を高めよう」と、ひとりの男性が立ち上がりました。そのひとは、現NPO法人ゆうきびと代表の福原圧史さんです。
昭和55年には、柿木村有機農業研究会を発足させて、全国に知られる柿木村になりました。
 

今でこそ、昔ながらの暮らしが見直されて、有機野菜の素晴らしが理解されていますが、発足当時は高度成長のまっただ中。農薬や化学肥料を使わず、手間ばかり掛かる有機農業は、なかなか受け入れられなかったのだそう。雑草や虫食い、病害の発生など、苦労は計り知れないほどでした。けれど「一本一本、手で草を抜き、一匹一匹、手で虫を取り除き」、こつこつ地道に試行錯誤を続けて、ついに「有機農業でやっていける!」と確信できるまでになったのです。

「3.11(東日本大震災)をきっかけに、さらに日本人は、食べ物や暮らし方について考える機会をもらったのではないでしょうか。“生きることは食べること”“口は命の入口、心は出口”と言いますよね。農家は生きていくために必要なものを作っているんです」と福原さん。
手間の掛かる昔ながらの農業だけれど、Iターン者も含めて、頼もしい後継者が育っています。

 

田んぼがなくなると
赤とんぼがいなくなるという事実。

 
「最近、8歳の娘と一緒に畑を借りました。生まれて初めてジャガイモを植えて、土の中で育っているのを見たんです。自然との暮らしに対して敬意を感じますね」と内山キャプテン。
 

「消費者の協力がなくては成り立たないのが、現在の有機農業。たとえば、スーパーで売っているお米より2〜3割高くても、農家へのサポート料だと思ってもらえれば」と福原さん。
 
「毎週、旬の野菜を8種類、契約いただいているお客様に送っています。これは山口県岩国市のお客様の分」と生産者の阿川有一さん。旬とは反対側の季節に育った野菜の栄養価は5分の1程度になるのだといいます。

 
また、水田が森と川とをつないでいて、もしも水田が消滅したら、赤とんぼも絶滅。なんと赤とんぼの99%が水田で産まれているのだと、初めて知った事実に驚きました。
 
柿木村の昔ながの有機農業は、日本の昔であり、日本の未来なのだと思えるのです。
 

 
【アクセスについて】
●かきのき村道の駅へのアクセス/JR山口線「津和野駅」から車で約31分
●島根県鹿足郡吉賀町柿木村柿木500-1
【WEBサイト】かきのき村