探県記 Vol.05
奥日野
(2014年・秋)
OKUHINO
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鉄が栄えた時間を遡る、
隠れ名所がたっぷりの日野川紀行。
日本神話に登場する伝説の怪物、八岐大蛇(やまたのおろち)。
1つの胴体に8つの頭と尾をもつ姿は、船通(せんつう)山系を源とする川を象徴する
という説があります。
今回の探県は、この日野川を奥日野から遡りながらその流域にある、製鉄にまつわる
名所を探県します。パートナーは御秒奈々隊員。20代の彼女がこの旅で何を感じてくれる
のか、そこにもちょっと興味があります。
鳥取県最大の河川、日野川と石見川と交わる地点に、日本画のような美しい風景が
広がっています。石霞渓(せっかけい)。南北12kmにもおよぶ大渓谷です。
「家族と一緒によく来ました。秋の紅葉がほんとうに素晴らしい。でも、春の桜やつつじ、
夏の新緑と藤も好き。冬の雪景色もロマンチックなんですよ。来るたびに、ため息が
出るようなきれいな景色が迎えてくれます」。
なんだ解説は、ぜんぶ御秒隊員がしてくれました(笑)
先を急ぎましょう。
奥日野には、福栄(ふくさかえ)神社や樂樂福(ささふく)神社など縁起の良い名を持った
神社がたくさんあります。なかでも日野町の山間部に鎮座する金持(かもち)神社は、
金運・開運の神社として有名。奥出雲と並んでたたら製鉄が盛んだったこの地で
精錬される玉鋼は、当時黄金よりも価値が高いとされていました。
日野町はその原料となる金(かね・砂鉄のこと)が採れたことから、日本でもここだけの
ありがたい名前がつけられたそうです。
「しっかりお参りしたから、幸せになれますよね。キャプテン」。
出雲街道の根雨宿で、
二人そろって江戸時代の人になる。
探県の終点は、根雨宿です。松江と津山を結び、鉄などを運ぶ物流の道として、
また江戸時代の参勤交代の道として利用された出雲街道にあります。
旅ゆく人々を癒す宿場町 として栄えたところ。大名が宿とした本陣の門や日野の
鉄師として繁栄した近藤家の屋敷など、目抜き通りに立ち並ぶ家々の佇まいは、
さながら江戸時代にタイムスリップしたよう。
「耳を澄ませると、当時往来していた人達の足音が聞こえてくるような気がする。
私も根雨宿に来たのははじめてだけど、山陰にはこういった歴史的価値の高い場所が
たくさんあるよね」。
「山陰の人って、奥ゆかしい人が多いから、ウチは凄いよ!とか言わないんですよ。
そんな地元の人しか知らない“いいところ”を伝えていくのが、探県隊。
私たちが発表していくことで、地元の人が自分の故郷をもっと好きになってくれたら
いいな。キャプテン、きょうは素敵な探県ができました」。
【アクセスについて】
●金持神社へのアクセス/ JR伯備線で根雨駅より車で約7分
●石霞渓へのアクセス/生山駅より徒歩約15分
●根雨宿へのアクセス/根雨駅下車すぐ