探県記 Vol.84

竜渓洞

(2016年9月)

RYUKEIDOU

5708

火山島〝大根島〟の地下
縦横無尽に走る溶岩洞窟に潜入!

 

島根県と鳥取県の真ん中に浮かぶ〝大根島〟は、約20万年前の噴火で誕生した、周囲わずか12㎞の小さな火山島。その地下には、モグラの巣のような溶岩洞窟が、縦横無尽に走っているといいます。
 
現在、大小無数にあるといわれる溶岩洞窟の中で、人が入ることができるのは、幽鬼洞(国指定特別天然記念物)と、竜渓洞(国指定天然記念物)の2つだけ。今回、探県隊が目指したのは竜渓洞。もう1つの特別天然記念物である幽鬼洞に入ることができるのは、年3回の見学会だけ。希少微生物の保護のほか、崩落の危険性があるためです。
 

さて、現場で待っていてくださったのは、島根県自然観察指導員であり、島根県ふるさと案内人の門脇和也さん。大根島の溶岩洞窟に入るためには、門脇さんへの事前連絡が必須。国指定の天然記念物ですから「文化庁に届け出しなければならない」ため。それでも、運良く門脇さんに出会えれば「すぐに入れますよ」とのことでした。
 
まず始まったのは、資料写真などによる、竜渓洞に入るための事前レクチャー。
「この写真は何だかわかりますか。ここにしか生息しない非常に希少な生物、体長約3mmのイワタメクラチビゴミムシです。洞窟に50年入っていますが、これまでに3回しか見たことがありません」と門脇さん。その他には、洞窟の中で一番大きな体長1cmのキョウトメクラヨコエビや 体長約2mmのコムカデも生息しているのだそう。このコムカデ、5億6千万年前から姿を変えていないため〝生きた化石〟と呼ばれ、「洞窟内の水の中に浮いていて、確実に見ることができる生物」だということです。
 
レクチャーが終わると、用意された長靴に履き替え、懐中電灯を渡されて、いよいよ出発。玄武岩にはめられた鉄格子門の鍵を門脇さんが開けると、そこには、地下へと続く階段が──。

 

希少生物〝ヨコエビ〟に遭遇!
〝もってる〟んです探県隊!

 

一歩一歩慎重に下りて行くと、途中、階段の壁が緑色になっているのがわかります。これは、菌類に属する〝地衣類〟が繁殖しているのだそう。さっそく、溶岩洞窟の洗礼を受けたような気分です。
 
竜渓洞は、約100mの溶岩洞窟。12段の階段を下りるだけで、真夏でもひんやりと涼しい空間。この日、35℃の地上に比べて、洞内は気温18℃、湿度90%でした。

 
階段を下りた正面には、棚状のくぼみになっている〝みけの棚〟があります。
右側は、〝神溜(かんだま)り〟と呼ばれる火口部で、円形状の空間なっています。
左側には〝千畳敷〟が見え、さらに最奥部には、竜神様がお生まれになったという〝産屋〟や、竜神様の寝床〝天台〟という場所もあるのだそう。けれど、崩落の危険性があるため、現在、最奥部には行くことも、見ることもできません。
 
「水溜まりをよく見てください。小さな生き物が動いているのがわかるでしょう。これがコムカデです」という門脇さんの説明に、探県隊が目を凝らすと、確かにいました! それも結構たくさんです。

 

 

すると、木内キャプテン、コムカデ以外の生物を発見。
「これはもしかして、ヨコエビですか!?」
「そうですヨコエビですよ。なかなか見られる生物ではないんですよ。皆さんの普段の行いが良いからでしょう!」と門脇さんも驚かれるほどの幸運。
山陰いいもの探県隊、やっぱりなにか〝もってる〟んです。
 
【アクセスについて】
●竜渓洞へのアクセス/JR松江駅より八束町行きバスで40分、八束町中央下車、徒歩5分
●島根県松江市八束町寺津

【WEBサイト】大根島 観光協会