探県記 Vol.81

加賀潜戸観光遊覧船

(2016年8月)

KAKA NO KUGEDO YURANSEN

5481

 

小泉八雲ゆかりの絶景地を
八雲のひ孫さんと行く神秘的クルージング

 
髪の毛三本動かすほどの風が吹けば、加賀への舟は出せない──小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が、著書『知られぬ日本の面影』の中でこう書いている、名勝天然記念物、加賀(かか)の潜戸(くけど)。日本海に突き出た島根半島の北の先端、自然が創造した摩訶不思議な絶景に、出雲四大神の一柱 佐太大神(猿田彦大神)の誕生地という神話も伝わる神秘的なスポットに、八雲は幾度となく訪れ、妻セツ(節子)とも連れだって訪れていました。
 
今回、木内吾平キャプテンと一緒に探県に出かける隊員は、民俗学者で島根県立大学短期大学部教授の小泉凡さん。ご存じ、小泉八雲のひ孫さんです。
 
江戸時代、当港は北前船の寄港地であり、たくさんの帆船が往来していたのだそう。もちろん当時の帆船の姿はありませんが、たくさんの漁船が散り散りに停泊している光景は、なんとも不思議です。
 

ラッキーなことに、この日の海はすこぶる穏やか。意気揚々と遊覧船に乗り込んで、出航!
穏やかな湾内から外海へ出ると、波が高く風も強い。髪の毛三本どころではありませんが、なにより当時と今とでは船の性能が格段に違いますから、大丈夫。
 

遊覧船が入っていったのは、高さ40m・長さ200mの〝神の洞窟〟といわれる『新潜戸』。船の幅いっぱいいっぱいの洞内に、ぶつからないようにするのは、船長の腕の見せ所です。

 
「八雲は、この洞窟で海に何度も飛び込もうとしました。その都度、船頭さんに〝ここは神聖な場所だから〟と留められたそうです」と小泉隊員。

 

「本当に素晴らしいところですよね。八雲の気持ちがわかります」と木内キャプテン。
とにかく蒼く澄んでいて美しい。8m下の海底の石にすぐ手が届きそうに思えるほどで、別名を〝青の洞窟〟。佐太大神の誕生の地として伝わるこの洞窟には、その昔、加賀神社があったのだそう。その証拠に、岩の上には白い鳥居が今も建っています。
 

蒼く綺麗な海だけだと思っていたら大間違い
待つのは神話をリアルに感じられる
神秘的な光景

 

 

新潜戸を抜けると、烏帽子の形に似た冠岩、今にも歩きそうな象岩、亀島、そして、ぽっかりと穴の開いた的島などが見えてきます。新潜戸の西口から東口を通って、この的島の穴まで一直線に貫いている光景は実に神秘的です。
 
新潜戸を左手に見て、遊覧船が進むと、高天原にたとえられる千畳敷の砂岩が出現。神様の乗った馬の蹄跡や、炊事に使ったかまどの跡を見ることができるのだといいます。
 
船が桟橋に着くと、旧潜戸へ上陸。親子の水子地蔵に手を合わせてから、全長130mのトンネルを通って、賽の河原へ向かいます。
 
奥行き50mの洞窟は、幼くして命が絶えた子どもたちの魂が集まる場所。夜になると子どもたちの魂が集い、石を積んでいるという伝説があります。

 
岩戸の風化が進んで参拝が危険になる以前は、旧潜戸の間近まで船が着いていたのだそう。その頃の面影が朽ちて残り、神殿遺跡のようでもありました。
 
〝マリンプラザしまね〟から出航する、約50分間のクルージング。綺麗な海と、自然の造形物と、神話をリアルに感じられる光景が、どこか神妙な気持ちにしてくれる奥深い日本海の旅でした。


 

【アクセスについて】
●マリンブラザしまねへのアクセス/JR松江駅よりバスにて「マリンゲートしまね」下車後、
「島根コミュニティバス」に乗り換え「マリンプラザ前」下車
●島根県松江市島根町加賀6120-14

【WEBサイト】マリンブラザしまね