探県記 Vol.42
注連川(しめがわ)の糧
(2015年10月)
SHIMEGAWANOKATE
3534
食味値91点を出す有機米
掛けた手間の分までおいしい注連川の糧。
島根県鹿足郡吉賀町注連川(しめがわ)は、ほんの20年程前まで、小さな田んぼがたくさんつくられていた、のどかな田園風景が広がる土地でした。けれど、国の圃場整備事業によって一気に集約されてしまい、工事が終わるころには、田が減り、人も減ってしまっていたのです。
「人のいらない農業をめざすと、里は滅びるんじゃないかと危機感を持ち、周りに呼びかけて有機農業にこだわる“注連川の糧”を設立しました」と土井義則さん。9軒の生産者からなる注連川の糧の代表です。
設立から今年でちょうど10年、有機農法でつくったお米「注連川の糧」は、食味値91点を出すお米に育っています。
ちなみに食味値とは、100点満点が最高点で、数値が高いほどおいしいお米ということになります。現在、日本産の標準は65〜75点なんだとか。
「一度、こちらのお米をいただいて食べたことがあるんですよ。感激しました!」と内山キャプテン。感激の理由は、食味値にあったんですね。
メダカ、ドジョウ、ドンコ、モリアオガエル…
35種の生き物が棲む田んぼは、未来の象徴。
吉賀町注連川は、標高250〜260mの中山間地で、4月から10月にかけて日照時間が長く、昼夜の寒暖差が激しい場所。そんな自然環境も、お米づくりに適しているのだといいます。
「やっぱり一番大変で手間が掛かるのは草取り。みんな手でやっていますからね」と土井さん。もちろん農薬などは一切使いませんから、そこは知恵を働かせて、チェーンをのれん状にした“人力草取り機”も独自開発しています。
近年では、町内外の園児・小学生が参加する「田んぼの生き物調査」が恒例イベント。開催場所は、もちろん注連川の水田です。
今年の調査では、ゲンゴロウ、メダカ、ドジョウ、ヨシノボリ、ドンコ、アカハライモリ、モリアオガエルなど、約1時間で35種の生き物が見つかりました。
「生き物や自然と共存する、それこそが理想。注連川を人がたくさんいる集落したい。農家も消費者も、幸福感と誇りを持って生きていけるそんな未来をめざしたい!」と土井さん。
この日、頼もしい仲間、古泓宜應さんと、潮竜太郎さんも駆けつけてくださいました。
若いIターンの生産者も加わった「注連川の糧」がめざすのは、懐かしい未来なのです。
【アクセスについて】
●島根県鹿足郡吉賀町
【WEBサイト】吉賀町でくらす