探県記 Vol.15
石州和紙・石州半紙
(2015年3月)
SEKISHUWASI、SEKISHUBANSHI
2216
国の重要無形文化財に指定される石州和紙。(せきしゅうわし)
世界遺産に登録される石州半紙。(せきしゅうばんし)
島根県西部の石見地方は、約1300年前から、手漉(す)き和紙の技術が伝承され守られている土地。原料に地元産の楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)を用い、日本特有の技法“流し漉き”で作られる石州和紙は、昭和44年、国の重要無形文化財に指定されています。
そして、石州和紙の中で最も生産量の多いのが、半紙という規格の手漉き和紙、石州半紙です。繊維が細くて長い地元産の楮100%で作られる石州半紙は、日本の紙の中で最も強靭と評されるほど。平成21年、石州半紙は、世界遺産(ユネスコ無形文化遺産)に登録されています。
江戸時代には、大坂商人たちが石州半紙を大切な帳簿に用い、火災になると、いち早く井戸に投げ込んで保存を図ったのだそう。水にも最強なことがわかります。
石州和紙の伝統を守り、手漉きの技術を続けている工房は、現在、三隅町内に4軒。そのひとつ、西田和紙工房さんを訪ねました。地元の原料にこだわって、原料も出来るだけ自分たちで栽培。工房前には、楮(こうぞ)畑が広がっています。
「和紙は生ものですから、原料がフレッシュで、雑菌が少ない冬が手漉きに適しています。寒ければ寒いほど締まった良い紙ができます」と7代目の西田誠吉さん。身体全体でリズムを刻みながら紙を漉く姿は、軽やかで格好いい。
原料の栽培から下処理まで、全行程をひとつの工房で行っているのは、全国でも稀な存在。西田和紙工房さんの和紙は、京都・二条城の襖の下張りなど、文化財の修復にも重用されています。
観る・買う・漉く
体験型の石州和紙会館。
美しく緑が整備された三隅中央公園内に、平成20年にオーブンした、石州和紙会館。その役割は、石州和紙の技術・技法を研修する施設として、後継者の育成を図ること。館内には、展示室、ショップ、ギャラリー、工房が完備されています。
ショップには、半紙や和帳などの伝統工芸品はもちろん、洋服やアクセサリーまで、石州和紙製のお土産が並びます。石見神楽に登場する立派な面や巨大な八岐大蛇(やまたのおろち)は圧巻です。
手漉き工房では、毎年、地元の学生さんたち約1000人が、自分たちの卒業証書を自身で製作。一般には、手漉きが体験できるワークショップも開かれています。
最初は、石州和紙と石州半紙の区別もわからずに訪れた手漉き和紙の里でしたが、人に触れ、技術を目の当たりにして、その素晴らしさに、ただただ感動。山陰のいいモノ発見に、ますます意欲が湧いてくる体験でした。
【アクセスについて】
●西田和紙工房へのアクセス/JR山陰本線三保三隅駅より車で約6分
●島根県浜田市三隅町古市場1694
●石州和紙会館へのアクセス/ JR山陰本線三保三隅駅より車で約13分
●島根県浜田市 三隅町古市場598