探県記 Vol.23

海士乃塩

(2015年6月)

AMANOSHIO

2782

後鳥羽上皇の時代より
食の豊かさで名を馳せる日本海の小島。

 
島根半島の沖合に約60㎞、日本海に点在する隠岐諸島の、その島前に位置する中ノ島が海士町です。1島1町の小さな島は、平城京に干しアワビなどを献上した記録が残るほど、古くから、天皇に食料を貢進する「御食国(みけつくに)」に位置づけられていました。
奈良時代、後鳥羽上皇が配流された島としても知られ、上皇がこの島で詠まれた和歌の歌集「遠島百首」の中には、塩焚きをお詠みなった歌があるそうです。

目の前に、おだやかな保々見湾が広がる海沿い、堂々とした文字で「海士御塩司所」と書かれた看板が掲げられるこの建物が、伝統的な手仕事で天然塩造りを行っている、海士乃塩の工場です。
 

 
原料は、日本の名水百選のひとつ「天川の水」が流れ込む、清らかな保々見湾の海水だけ。
岩ガキの養殖場にもなっている、この清浄海域の湾は、対馬海流が打ち寄せ、ワカメなど様々な海藻が生い茂る豊かな海なのです。
 

原料は、清らかな隠岐の海水だけ。
自然を信じて、手をかけ、時間を費やして。

 
海士乃塩の製造方法は、いたって昔ながら。
まず、保々見湾から海水をくみ上げて、1000本もの竹枝が天井から吊された枝条架式濃縮棟で凝縮。海風に当てながら、竹枝に何回転も海水を巡らせ、水分だけを蒸発させて、高濃度に濃縮させるというわけです。

次に、濃縮した海水を、大きな平釜に入れ、島の薪だけを使って炊き上げて、煮詰めます。
そして、苦汁(にがり)を分離して、煮詰めること、約10時間以上。根気と忍耐のいる仕事です。
 

 
こうして、煮詰め終わった塩は、天日干し棟に移されて、ゆっくりと自然乾燥。
最後に、異物などのチェックを行い、もしも混入していたら、1つ1つ、丁寧に手作業で取り除かれていきます。商品に仕上がるまで、約1ヶ月から2ヶ月という、長い時間が費やされています。

天日干し棟にお邪魔して、ちょっと味見をさせていただきました。
「確かに〜さわやかな海の味がしますね」と御秒さん。
 

「天日干しの塩なんて今や貴重。野菜はもちろん魚にも肉にもいい」と錦織監督。
「人の手が数多かけられている。そんなところが日本の仕事らしいですね」とキャプテン。
極小の1粒1粒に込められた塩士さんたちの思いが、海士乃塩をおいしくしているのです。
 
【アクセスについて】
●隠岐の島 海士町へのアクセス/境港・七類港から隠岐汽船で菱浦港下船
●ふるさと海士のアクセス/菱浦港から車で3分
●島根県隠岐郡海士町福井1524-1