探県記 Vol.66
石谷家住宅
(2016年3月)
ISHITANIKE-JUUTAKU
4674
敷地3000坪、部屋数40余り、土蔵7棟の大邸宅
国の重要文化財に指定される石谷家住宅
江戸時代、参勤交代の宿場町として栄えた智頭宿。往時、この地は、豪奢な町屋が軒を並べ、町方、在方、他国商人との活発な交流でたいそう賑わっていました。
当時の面影を、今も色濃く残す因幡街道に沿って、ひときわ堂々と建つお屋敷、それが石谷家住宅。その規模、敷地3000坪、部屋数40余り、そして土蔵7棟という大邸宅です。
石谷家は、元禄年間(1688~1704)初期、鳥取城下から智頭に移り住み繁栄してきた旧家で、大庄屋・宿場問屋・林業を営む事業家であり、国政にも参加する政治家としても活躍してきたお家柄。
現在の石谷家住宅は、江戸時代の町屋形式の家屋を大正8年(1919)から約10年の歳月をかけて改築した大規模な屋敷形式。今ではとうてい手に入らないだろう最高の資材を用いて、最高の施工技術で建てられています。
そして、近世から近代への建築技術の推移を示す貴重な歴史的建造物として、国の重要文化財に指定しています。また、四季折々、美しく移ろう約400坪の庭園は、国の名勝地に登録されています。
石谷家住宅を案内してくださるのは、因幡街道ふるさと振興財団の国岡三千也さん。JR智頭駅の山口駅長と共に、豪邸の内部へ進みます。
智頭杉、栗の木、春日杉、屋久杉、シオジ材……ここはまるで、木材のショウルーム
「まず皆さんには、天井を見上げていただくんです」と国岡さん。主屋に入ってすぐの土間で、いきなり度肝を抜かれます。
そこは、高さ14mの広大な吹き抜けの空間。赤松の巨木を用いた梁組が豪壮で、往時の繁栄ぶりがいきなり目の前に広がっています。
「かまどがあるのに、梁が煤(すす)けていませんね、なぜですか?」と内山キャプテン。
「良いところに気がつきましたね。この土間では偉い方をお迎えしましたから、煙出しの“くど”は地下に這わしてあります。それでは虫食いを心配されるかもしれませんが、梁は赤松の芯だけにしてあり、虫が食べる部位は削ぎ落としてあるんです」と国岡さん。
これはもちろん、ほんの序の口、石谷家住宅は、奥に進むほど、説明を聞いて目の当たりにするほど、その凄さを実感できる仕掛けです。
本玄関は江戸時代、参勤交代のお殿様が宿泊なさった家として格を表すための式台。36枚の畳が敷かれた廊下の天井には智頭杉を、濡れ縁には水に強い栗の木を、新建座敷の天井には奈良の春日杉、床柱には屋久杉、等々。
「木材のショウルームといわれる理由が、よくわかりますね」と内山キャプテン。
江戸期の建物である江戸座敷は、庭園を眺めるのに最上の間で、裏山から落ちる滝の流れを一年中楽しめる場所。
「よく“裏山を借景に”などと表現しますが、ここの場合、裏山も全て自前の景色。借景ではないんですね」と国岡さん。
その他にも、若い人たちがパワースポットとい呼ぶ“猪目窓”はハート型ですし、結婚式も挙げられる神殿室があったり、家の中にシオジ材の木目が美しい太鼓橋まで架かっています。
石谷家住宅は、いかにも百聞は一見に如かずの場所。直に見て、感じて欲しいスポットなのです。
【アクセスについて】
●石谷家住宅へのアクセス/JR智頭駅から徒歩約15分
●鳥取県八頭郡智頭町智頭396
【WEBサイト】石谷家住宅