探県記 Vol.104
奥出雲たたらと刀剣館
(2017年4月)
OKUIZUMO TATARA TO TOKENKAN
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ヤマタノオロチのモニュメントが鳴く
たたら製鉄の里・奥出雲町横田「むらくもの丘」
その昔、日本で発展した製鉄法「たたら製鉄」の一大産地だった奥出雲町横田の丘陵に、のどかな横田の町並みを一望する「むらくもの丘」があります。シンボルは、見上げるほど大きなヤマタノオロチのモニュメント。神話が伝えるように8つの頭を持つこのモニュメント、風の吹き加減でうねるように動き、不気味な鳴き声を聞かせてくれます。
周辺には、例年5月中旬から下旬にかけて、約1000本の植栽が花を咲かせる「しゃくなげ園」も人気のスポットです。
ヤマタノオロチにあいさつをして、向かったのは「奥出雲たたらと刀剣館」。日本遺産に認定された「出雲國たたら風土記~鉄づくり千年が生んだ物語~」のガイドセンターとして、奥出雲町のたたら製鉄について総合的に展示・紹介する施設になっています。
館内では、たたら操業を紹介するパネルや、職人の作業風景を再現したジオラマなども展示されていて、たたら製鉄の当時の様子が実にわかりやすくなっています。
大迫力の実物大たたら炉の地下構造
その複雑さはアート的で神秘的
奥出雲たたらと刀剣館のメインは、やはり「たたら炉」のレプリカ。なんと実物大の巨大な炉が断面で再現されていて、その迫力と緻密さは圧巻。忠実に再現された炉の地下構造は、地上で見える炉の3倍、地下3mにもなる迫力なんです。
「ずいぶん複雑な構造をしていますね。まるでアートみたい!」と驚いた様子の石原隊員。
「全てが理に適った形なんでしょうね。昔のひとは凄いな!」と木内キャプテンも興奮した様子。
「はい。大げさな造りのようですが、ムダなものはひとつもありません。炉の地上部は毎回壊しますが、事故さえなければ、地下部は半永久的に使えるのだそうです」と学芸員さん。ひとつひとつの解説が、とても興味深いものばかりです。
たたら製鉄には、「村下(むらげ)」と呼ばれる総監督がいました。砂鉄を炉に入れられるのも村下だけという、一番偉い存在です。
「炉の声を聞き分けて鋼が〝育ったかな〟と気配を感じるのが村下(むらげ)の仕事。一朝一夕にはできない仕事です」
けれど、そんな村下でも、たたら場に入れなかったときがあったのだそう。それは、家で赤ちゃんが生まれたとき。たたらの神さまは「金屋子神」という女の神さまで、血の赤色を嫌ったと伝わるからです。けれど一説には〝製鉄という危険な仕事から女性を守るため〟ともいわれているのだそうです。
別館の「日本刀鍛錬場」では、毎月第2日曜日と第4土曜日の2回だけ、奥出雲在住の刀匠・小林一門による作刀鍛錬実演を開催。刀匠の技に見入りながら、たたら製鉄に思いを馳せるのも楽しい時間になりそうです。
【アクセスについて】
●奥出雲たたらと刀剣館へのアクセス/JR木次線、出雲横田駅より徒歩約15分
●島根県仁多郡奥出雲町横田1380-1
【WEBサイト】しまね観光ナビ