探県記 Vol.86

和鋼博物館

(2016年9月)

WAKOU HAKUBUTSUKAN

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中国地方で発達した送風器〝天秤ふいご〟は
たたら製鉄にとってノーベル賞ものの発明だった

 
豊かな森林資源に恵まれた中国山地は、良質な砂鉄を埋蔵した宝の山。その豊富な資源により、たたら製鉄が盛んな地帯でした。江戸時代後半、中国山地で生産された鉄は、国内総生産量の約8割を占めたのだそう。山地から港へと運ばれた鉄は、北前船などに積まれて全国の刃物産地へと出荷されて行ったのです。
 
中海に面した安来港は、こうした鉄の積み出し港として栄え、鉄問屋の蔵が軒を連ねていたといいます。そんな歴史的な地に、たたら製鉄の歴史や文化などを紹介するミュージアム「和鋼(わこう)博物館」があります。
 

とんがり帽子のような特徴的な屋根の形は、たたら製鉄の象徴的施設である〝高殿(たかどの)〟をイメージしたもの。どこか近未来的でもある建物に、なんだか期待感が高まります。
 
まずは、ガイド役の高岩俊文さん(安来市教育委員会)とごあいさつ。鉄の製造工程をメインにする展示室へと向かいます。
 

目の前にそびえるのは、たたら製鉄に欠かせない精錬に用いる送風器、足踏み式〝天秤ふいご〟。国の重要有形文化財に指定されています。
 
「以前は手動で行っていましたから、この天秤ふいごが発明されて、飛躍的に効率が上がりました。たたら製鉄にとっての、ノーベル賞ものなんです」と高岩さん。
 
第1展示室は、各種の操業用具を中心に、たたら製鉄の生産物である〝鉧(けら)〟や〝玉鋼(たまはがね)〟、砂鉄の採取法である〝鉄穴(かんな)流し〟や、たたら工房となる〝高殿(たかどの)〟などを、精密な模型で紹介。さらに、たたら製鉄で用いる道具類250点を展示するなど、非常に充実しています。
 

 

「こうして、ここで模型を見てから山間の現地へ行った方が、きっとより理解できるでしょうね」と興味深そうに、細部まで見入る小幡隊員です。
 

昔話では終わらない時代を超えた高度な技術
現代まで脈々と受け継がれる、たたら製鉄のDNA

 
そもそも和鋼博物館の前身は、日立金属安来工場が設立した和鋼記念館。
2階展示室には、「錆びにくい。摩耗しにくい」ことが特徴の、現代の安来鋼製品が紹介されています。
 

「日立金属では、品質が厳しく問われます。現在、カミソリの刃の世界シェアは6割。量ではなく、品質の良いものをつくる。そんな、たたら製鉄のDNAが脈々と受け継がれているんです」と高岩さん。
 
展示が終盤になると、1口(ふり)・1㎏はあるという日本刀のコーナーがあり、許可を得て持たせてもらえることもできます。
 

「美しいですね。しかし、重い。往時の武士は、この日本刀を腰にさして歩いていたんですね」と感心しきりの木内キャプテンです。
 
エントランスホールで待っていたのは、〝天秤ふいごの体験コーナー〟。天秤ふいごを踏む役〝番子(ばんこ)〟に挑戦する木内キャプテンも、自然と笑顔になっていました。
 

見て、触れて、感じて、体験できる、たたら製鉄ミュージアム「和鋼博物館」。かつて世界を席巻した和鋼の世界に、どっぷり漬かれるスポットです。
 

 
【アクセスについて】
●和鋼博物館へのアクセス/JR安来駅より徒歩15分
●島根県安来市安来町1058

【WEBサイト】和鋼博物館