探県記 Vol.116

鶏楽園

(2017年8月)

KEIRAKUEN

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染絵師が目指した地に足の着いた生き方、その答えは自家製餌100%で育てる放し飼い鶏たちの自然卵

 
JR石見横田駅からほど近く、のどかな田園の真ん中に「染工房」の看板を見つけたら、そこが今回の目的地。よく見れば、もうひとつ「鶏楽園」の看板がありますから。
「レストラン ボンヌママン ノブ」のオーナーシェフ上田幸治隊員と尋ねたのは、自家製餌を100%使用し、放し飼いで鶏たちを育てていらっしゃる「鶏楽園」さんです。

 
創業者は、村上淳二さん。京都で37年間、染色に従事されてきた染絵師さんです。現在でも染絵師の仕事を続けられていて、あの「染工房」の看板が掲げられているということです。

 
村上さんが、染色の工房を京都から故郷の益田市に移したのは、2007年のこと。
「地に足の着いた生き方がしたい、畑や田んぼをつくりたい」と、地元に帰られたのです。
 
安全な農業を目指していた村上さん。もちろん農薬は使わず、加えて安全な肥料が必要になります。
そこで、肥料となる鶏フンを得るために、放し飼い自然卵をはじめることにしたのでした。
こうして、2009年、「鶏楽園」誕生。同時に、鶏フンを利用しての無農薬野菜の栽培がはじまりました。

 
現在、鶏の種類は、もみじ・名古屋コーチン・黒かしわ・チャボ・烏骨鶏など。みんな元気に庭や畑を自由に歩き回っています。
「鶏たちには、土の上を歩かせたい」と村上さん。なんでも、土の中の石を食べることで、鶏たちは〝砂ギモ〟をつくるのだそう。それが自然のあるべき姿なんですね。

 
そんな鶏たちの餌は、給食センターで残った生野菜、真砂とうふ、持石海岸で採取した天草など、安全な食材で自家製した100%安全な食事。大事な飲み水は、きれいな匹見川から取り込んでいます。

 

アレルギーのお子さんが「鶏楽園の卵なら大丈夫!」と太鼓判を押してくれたという幸せな事実

 
鶏楽園では、村上さんの後継者が立派に育っています。
長野県出身の上地幸江さんがそのひと。京都時代、染色のアシスタントをしていた方で、鶏楽園に来て2年半になる頼もしい逸材です。
「毎朝5時・6時から、2時間かけて餌づくり。1日2食つくります」と上地さん。大変な仕事を楽しんでいらっしゃるのが伝わります。

 

 
なぜって───
「今、卵アレルギーのお子さんが多くなりましたよね。でも、アレルギーのあるお子さんが、〝うち(鶏楽園)の卵なら大丈夫!〟といって食べていただいているんです」そんな事実があるんですから。

 
産みたての卵を手に乗せると、ズッシリと重たくて、いつもの卵ではないことがわかります。
さらに割ってみようとすると殻が頑丈で、そして出てきた黄身がレモン色!これがむかしながらの卵なんですね。

 

 
「最初、鶏楽園さんの卵を見たときは衝撃的だった!色もそうだし、なんといっても味がやさしい。醤油を入れると、卵より醤油の味が勝っちゃうくらいなんです」と上田隊員。
 
ですから、TWILIGHT EXPRESS瑞風でお出しするのは、ストレートにやさしい味を表現したいからアイスクリームを。材料は鶏楽園の卵と牛乳だけ。バニラビーンズは入れない。
「余計なものは入れたくない。せっかくの卵がもったいないから」
 
現在、鶏楽園さんの卵を手に入れるには、基本、予約注文をするしかありません。
1日の休みもない鶏たちとの濃密な暮らし。これ以上、増やせないのがその理由です。

 

【アクセスについて】
●鶏楽園へのアクセス/JR石見横田駅から車で5分
●島根県益田市隅村町654
【WEBサイト】鶏楽園