探県記 Vol.103
若桜町内
(2017年3月)
WAKASACHONAI
7925
大火を教訓にした都市計画で誕生
明治時代のアーケード街「カリヤ通り」
若桜鉄道「若桜駅」から駅前通りを100mほど真っ直ぐ進んで行き当たるのが、若桜宿の「カリヤ通り」です。この仮屋(カリヤ)とは、家と道路との間に幅1.2mほどのひさしが設けられた、今でいうアーケードのこと。平成20年、国土交通省が認定する「夢街道ルネッサンス」に選ばれています。
中世には若桜鬼ヶ城の城下町として、江戸時代以降は鳥取-姫路を結ぶ若桜街道と伊勢街道の宿場町として栄えた若桜町。宿場町の東西には、防火用水や流雪溝の役目を果たす5本の川が流れていました。
「若桜とかけて、大鼓と解く。その心は、裏と表に皮(川)がある」と楽しい解説をしてくださるのは、ガイドの川谷輝久さんです。
「明治18年、大火を経験したことで川と仮屋を設けることが決められた当時の、都市計画の文書が残っています。若桜の都市計画は東京より先に実施されているんです。凄いことですよね」
カリヤ通りで最初に目に飛び込んできたのは、「昭和おもちゃ館」の看板。店頭は、昔懐かしい駄菓子屋さんになっています。
「この辺りにはコンビニも百均もないので、子どもたちが学校が終わったら来てくれるんですよ」と店員さん。10円・20円の駄菓子や100円のくじなど、かつて子どもだった大人たちにとっても、これは嬉しい品揃えです。
駄菓子屋の奥には「昭和のお部屋」が、2階には若桜鉄道のジオラマをはじめ、ブリキのロボットなど約300点のコレクションが展示されています。
「外観からは想像できないくらいのコレクションですね。おもしろい!」と木内キャプテン。かつての子どもの表情になっています。
続いて入館したのは、大正初期の建物を利用する「若桜民工芸館」。全国の土鈴が、4000~5000個という数でコレクションされています。さらに奥へ進むと、美しい中庭をはさんでギャラリーとして利用されている立派な土蔵もありました。
整然と建ち並ぶ白壁土蔵群が美しい「蔵通り」
かつての繁栄ぶりが偲ばれる別世界空間
カリヤ通りの真ん中にある休憩交流処内には、明治20年頃の建物を利用した「ダイニングカフェ新」も出来ていて、新鮮な地物食材にこだわったメニューがいただけます。ランチにコーヒーブレイクに、ゆっくりしたい場所です。
「お店の前の一段低くなっている場所は〝いと場〟と呼ばれる洗い場です。表の川では野菜などを洗い、裏の川では汚れた食器などを洗っていました」と川谷さん。
「この建物が典型的な仮屋なんですね」と興味深そうに見入る徳持隊員です。
ダイニングカフェの反対側の出入口から抜けると「蔵通り」へ。その名の通り、白壁土蔵が建ち並ぶ美しい通りが続いています。
「珍しいシャチホコが上がる西方寺や、蓮教寺などお寺も多く、別称〝寺通り〟とも言います。ご覧のように若桜の蔵は〝妻入り〟ですから見栄えがいいでしょう」と川谷さん。整然とした通りの美しさの理由は、まさに建物の妻側(棟と直角の壁面)に出入口を設ける〝妻入り〟の造りでした。さらに、家々ごとに工夫を凝らした門の意匠を楽しく鑑賞することができました。
江戸から明治・大正、そして昭和の歴史が、コンパクトながら凝縮されている若桜宿。
ちょっだけ別世界に飛び込んだような不思議な気分に浸れて、懐かしさにゆっくりくつろげる町です。
【アクセスについて】
●若桜町へのアクセス/若桜鉄道線若桜駅
●鳥取県八頭郡若桜町若桜298
【WEBサイト】若桜町