探県記 Vol.118
八雲本陣
(2017年9月)
YAKUMO HONJIN
9382
歴代松江藩主が休泊した八雲本陣とは
出雲地方屈指の大地主・木幡家の大邸宅
山陰道と出雲街道の分岐点に、旧街道に面して白壁の黒板塀が続き、一般の玄関以外に2つ御成門(おなりもん)を持つ立派なお屋敷があります。
国指定の重要文化財、八雲本陣。江戸時代には、歴代の松江藩主が領内を巡視される際の本陣宿として、明治以降は、皇太子時代の大正天皇や昭和天皇も訪問された、出雲地方屈指の旧家、木幡(こわた)家住宅です。
ご案内いただけるのは、「父が15代目、現当主で16代目となります」と話してくださる、木幡(こわた)道子さんです。
さすがのファビアン隊員も「ここは初めて!」と興奮ぎみ。
フィルムカメラをかまえて「あ~いいな~」と、さっそくシャッターを切りまくり。
JR宍道駅から駆けつけた和田隆駅長と一緒に入館です。
まずは、高い吹き抜けを見上げる土間「臼庭(うすにわ)」へ。
木幡家は私設の消防隊を抱えていたことから、降ってくる火の粉を払ったという黒い団扇「まとい」や、延焼を防ぐための「さすまた」など、火消し道具が見上げる壁にズラリ架けられています。
天井近くにある明かり取り窓は「雨障子」。無粋にならないように、青海波模様が蝋で描かれていて、障子紙が破けないように補強されていました。
臼庭から式台を座敷へ上がると「藩主の間」。
欄間は欅(けやき)の1枚板で、梶谷東谷軒の作「麻の葉透かし花籠図」。
「江戸の終わり頃のもので、馬の尻尾の毛をよったもので彫ったと伝わっています」
時空の歪みに迷い込んだような
不思議な感覚を楽しんでみる
木幡さんに続いて館内を進むと、次から次、由緒あるお部屋が現れます。
3畳の小さな和室は「煎茶室」。
「不昧さんの頃はお抹茶でしたが、軍人さんがいらっしゃるようになって、お煎茶室になりました」
「ご家老の客間」は、明治5年、ここに移築されたという松江藩家老・朝日丹波邸の元新座敷。
「日本の家は移築できるんですよね」
10畳2間続きの「飛雲閣」は、明治40年、皇太子殿下(のちの大正天皇)の山陰行啓の際、出雲に向かわれる途中、お昼を召し上がったお部屋。殿下に随行していた東郷平八郎海軍大将の書があり、巨大な銀屏風があり、興味深い歴史とお宝に、ちょっと思考が追いつきません。
庭越しに見える建物を見て「あれは?」と不思議がるファビアン隊員に───
「お茶室の躙(にじ)り口、出入口ですね」と木幡さん。そして「ちっちゃ!」と驚くファビアン隊員。この遣り取り、なごみます。
さらに奥へ進むと、かつて旅館だったという建物へ。昭和40年頃の建築という32畳×32畳の大広間が出現。本陣だった当時の「御宿割」が残されていました。
敷地約1200坪、部屋数40を超える広大なお屋敷の、見学できるのは一部ですが、それだけでも十分に奥深い場所、八雲本陣。そこには、江戸があり、明治があり、昭和があり、そして、平成の時間が流れていて、なんとも不思議な感覚になれる空間でした。
ちなみに、入館には電話予約が必要です。お忘れなく。
【アクセスについて】
●八雲本陣へのアクセス/JR宍道駅から徒歩5分
●島根県松江市宍道町宍道1335
●電話/0852-66-0136
【WEBサイト】松江観光協会宍道町支部