探県記 Vol.49
木次乳業
(2015年12月)
KISUKI NYUGYO
3941
奥出雲の森と水と里人が育む
木次(きすき)乳業の日本初パスチャライズ牛乳
緑いっぱいの山里の、斐伊川の支流沿いに、日本初のパスチャライズ牛乳を開発した、木次乳業のチーズ工房があります。
木次乳業の創業は昭和37年(1962)、農業において、農薬や化学肥料がもてはやされる時代に、その危険性をいち早く察知して、伝統農法を見直すことからスタート。木次乳業は、安全・安心な牛乳作りのために、有機農業への取り組みを始めたのです。
ではここで、パスチャライズ牛乳の説明をしましょう。パスチャライズ牛乳とは、低温殺菌牛乳のこと。昔から牛乳を飲んできたヨーロッパでは主流の殺菌法なのだそうで、発明したフランスの細菌学者パスツールさんの名前から、パスチャライズと名付けられています。
この低温殺菌法では、牛乳中の栄養分や風味を損なうことなく、有害な細菌だけを死滅させることができ、これをパスチャリゼーション(63℃~65℃/30分間殺菌)と呼んでいます。低温で殺菌することで、牛乳中のタンパク質はほとんど熱変性せず、カルシウムと一緒に、ゆっくりと体内で消化吸収それるそう。牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするという人も、心配せず飲むことができるのだそうです。
ちなみに、保存性や流通性の高い市販の牛乳は、超高温法や完全滅菌法により牛乳中の微生物を全滅させてしまう高熱処理ステアリゼーション(120℃~145℃/2~3秒間殺菌)で製造されています。
100キロの牛乳からできるチーズは僅か10キロ
良質な牛乳が本物のナチュラルチーズをつくる
木次乳業に『きすきチーズ工房』ができたのは、約35年前。誰もが知る大手企業以外、まだ手つかずの分野でした。木次乳業は、酪農業の発展を願って、地元の酪農家たちと一緒にナチュラルチーズ作りに取り組んだのです。
「チーズにも旬というか、季節のようなものがあるんですか?」とキャプテン。
「冬に作ったらコクがあり、夏はあっさり、春は草の香りがするんですが、一年中さほど変わりません。季節によって原料も違ってきますから、配合や作り方を変えて、同じ味になるようにしています。四季を通してはじめて、やっと1回経験したことになる。長く続けるほど自分の未熟さがわかってきます」と川本さん。チーズ作り20年のキャリアです。
現在、販売するチーズの種類は、カマンベール、モッツァレラ、黒ゴマゴーダ、プロボローネ、ラ・ルージュなど10種。さらに、チーズの王様といわれ、極めて質のいい牛乳と技術を要するというエメンタールの試作に日本で初めて成功。製品化の予定はないそうですが、乳質の良さを確かめるための試作なのです。
ナチュラルチーズとは、自然に近い牛乳でなければ作れないんです。
パスチャライズ牛乳あってこその、ナチュラルチーズというわけなんですね。
【アクセスについて】
●木次乳業へのアクセス/ JR木次線木次駅から車で約6分
●島根県雲南市木次町日登228-2
【WEBサイト】木次乳業